誹謗中傷対策マニュアル
MANUAL

2019.08.01

ネット問題

ネットで誹謗中傷されたらどうする?反撃方法を教えます(弁護士監修)

匿名掲示板やSNSで悪口を書かれたり、個人情報をさらされたりしてトラブルになるケースが増えているみたいね。
ウソの噂話やネガティブなウソ情報やウワサを巻き散らかされて、火消しに困っている企業や商店、芸能人も多いらしいよ。
どうにかできないのかしら?
泣き寝入りしても、何の得にもならないから、きちんと対策をすることが大切だよ。ここで、インターネットで誹謗中傷されたときの対策方法を教えてあげよう。

 

目次

「誹謗中傷」とは? 言葉の意味

 「誹謗」と「中傷」が並べて使われるうちに、「誹謗中傷」という四字熟語になったんだ。

「誹謗中傷」の意味は? 類語は?

元来、「誹謗」と「中傷」はそれぞれ別の熟語でしたが、現在では両方あわせて「誹謗中傷」として使われることも一般的になっています。岩波書店刊行の『広辞苑第七版』によると、誹謗の意味は「そしること。悪口を言うこと。」、中傷は「無実のことを言って他人の名誉を傷つけること。」となっています。

誹謗中傷とは、「根拠のない悪口を言い相手を傷つけること。」です。類語・同義語には、「名誉毀損(めいよきそん)」や「貶す(けなす)」、「悪口」などがあります。「当てこすり」、「悪態」、「言葉の暴力」など、いわれのない非難も含まれいます。

「誹謗中傷」を英語でいうと?

誹謗中傷は、英語で、「Libel」、「Slander」、「Defamation」等と表現します。使い分けは、Libelが口頭での誹謗中傷、Slanderが印刷物や各種メディア等でのもの、そしてDefamationはそれらすべてを含んだ場合の誹謗中傷行為を表しています。

「誹謗中傷」になる、ならないの違いがどこにあるか教えます。

  どんなことが誹謗中傷になり、どんなことが誹謗中傷にならないのか、その基準を説明しよう。

「誹謗中傷」と判断される基準は?

誹謗中傷とされるか否かは、その発言や書き込みが事実に基づいたものであるか、さらに発言の頻度なども指標として用いられます。その基準はどこにあるのでしょうか。一般論として「事実に基づいた発言や記述」であるか、否かという点が基準になります。

つまり発言や文章の内容が、正当な事由や根拠のない悪口や嫌がらせで、他人の名誉を毀損するものであれば、誹謗中傷と言えるわけです。自分自身は「正義感」や「正当性」に基づいた発言や記述をしていると考えていても、根拠が薄弱だったり、あるいは思い違いだったりする場合は、誹謗中傷になってしまいます。

また、インターネットでは、SNSや掲示板サイトなどで、常軌を逸した回数の悪口、例えば「アホ」「バカ」という書き込みを繰り返し行った場合も誹謗中傷に該当しますので注意しましょう。

誹謗中傷」にならないのは、どんなとき?

悪口や根拠のない嫌がらせ的な発言は法律的に犯罪になる場合があります。侮辱罪(刑法231条)、名誉毀損(刑法230条)、信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条)、信用毀損及び業務妨害(刑法233条)などがあります。これらは根拠なく相手に対して誹謗中傷を行った場合が該当します。

つまり、根拠があり、批判や反対意見として正当と見なされれば誹謗中傷にならないということになります。また、文脈的に肯定的、否定的の両面にとれる内容なども誹謗中傷にならないと考えられています。

たとえば「ゲームイベントの販売コーナーが炎天下での待ち行列長くて大変だった。運営会社の仕切り悪すぎ」というような発言について、主催者側のイベント運営や手配した販売員の少なさなどを批判しての誹謗中傷と捉える立場もありますが、逆に人気が出たイベントでそのため主催者側の想定以上の人が押しかけた、という事実に基づいた批判的発言ともとれるわけです。このような場合は例のような発言は誹謗中傷にならないと考えられています。

本当のことを言っても「誹謗中傷」になる?

誹謗中傷は悪口や根拠のない嫌がらせ的発言だけが対象なのでしょうか。実は「真偽を明確に確認できる内容」であっても、「インターネットを含んだ公然の場」で「相手の評価を下げるための言動や書き込み」を行った場合、誹謗中傷に該当する可能性が高くなります。

例えば近隣トラブルについて、トラブルの原因そのものは事実だとしても、相手の名前を出し、常識を越える内容や回数で悪口を近隣住民に触れ回った場合などが該当します。

また、飲食店で、「ある日初めてその店を訪れた際、ランチを注文してから配膳まで長時間待たされた」ことが事実だとしても、一度だけの体験をその店が常にそのような接客を行っているように地域の集まりや会社内などで言いふらしたり、インターネットでしつこく流布したりした場合、この店の評価を下げる目的で誹謗中傷を行っていると判断される可能性があります。

批評」「批判」「誹謗中傷」の違いは?

批評と批判、誹謗中傷の違いを、ここでは『広辞苑第七版』の定義を引用して比べてみます。

ひ‐ひょう【批評】

物事の善悪・美醜・是非などについて評価し論ずること。(『広辞苑第七版』)

 

ひ‐はん【批判】

①物事の真偽や善悪を批評し判定すること。

②人物・行為・判断・学説・作品などの価値・能力・正当性・妥当性などを評価すること。否定的内容のものをいう場合が多い。哲学では、特に認識能力の吟味を意味することがある。「強い―を浴びる」(『広辞苑第七版』)

 

批判と批評は両者とも根拠があることが前提です。

これに対して、誹謗中傷は基本的に根拠がない、あるいは根拠があっても常軌を逸した悪口などを行った場合が該当します。

インターネットの「誹謗中傷」を放置すると危険な理由

  インターネットでの誹謗中傷は放置すると、加害者の特定が不可能になるだけでなく、広く拡散してしまって対処不能になるという危険があるんだ。

インターネットの誹謗中傷に特徴的な“困った点”とは?

SNSや掲示板を見なければ誹謗中傷されても気にならないし、みんなが見ているわけでもないし……ほっておけばどうにかなるんじゃないかしら?
とんでもない! 『人のウワサも75日』っていうけど、それが全く通用しないのがインターネットの世界なんだよ。
どういうこと?
ほっておいたら、たいへんなことになる理由を説明するよ。

インターネットの誹謗中傷は、実社会での発言や落書き、風評被害などと比較して、匿名性がより高く、発言者の特定が困難な場合があります。また、情報発信の手段としてSNSや掲示板等様々な発信経路があるため、発信源の特定が困難だという特徴があります。

利用者が、全く本人と面識もなく事実も確認することなく、誹謗中傷の書き込みを「事実誤認に基づく身勝手な正義感」や「なんとなく面白かったから」などの理由で拡散する事例もあります。誹謗中傷が、これらSNSや掲示板での影響でより拡大してしまう事例も起きています。

(理由1)消せなくなる

ネットで拡散した誹謗中傷は、SNSや掲示板、さらにそれを見た人同士の会話などさまざまな伝達経路で拡散していきます。発生元に誹謗中傷について削除や謝罪を求め、それによって誹謗中傷についての情報の発信が停止したとしても、拡散経路すべてに「その誹謗中傷はデマだった」という訂正や取り消しが伝わるとは限りません。訂正や取り消しがあったことを知らない人が、引き続き誹謗中傷を拡散し続ける場合もあります。このようにインターネット上の誹謗中傷は一度発生すると、その後の訂正や削除が非常に困難だという特性を持っています。

(理由2)プライバシーが侵害される

インターネットを使った誹謗中傷や嫌がらせの手法として、匿名掲示板に個人の電話番号や住所、勤務先名などを書き込み、個人のプライバシーを拡散するものがあります。

これは「身元バレ」などとも呼ばれ、例えば5ちゃんねるや爆サイなど匿名掲示板上の企業情報専門スレッドに社員の本名や携帯電話番号など個人情報が書き込まれるような事例があります。このような「身元バレ」によって、過去には職場や自宅に興味本位で押しかける人が現れたり、あるいはイタズラ電話を掛けてきたり等の実害が発生しています。この「身元バレ」の怖いところは被害を受ける範囲が本人に留まらないことです。イタズラ電話や自宅押しかけなどに家族や友人が巻き添えになったり、勤務先に誹謗中傷を信じた人からのクレーム電話が掛かってきたりして業務に支障を来す場合もあります。

(理由3)いじめられる、誤解される

実社会でもAさんの誤解や勝手な思い込みでBさんが悪者にされてしまう、ということが起きることがありますが、インターネットでも同様な事例が発生しています。最近ではある交通事故の加害者と同姓の人に対して「関係者だ」「親類だ」とデマが流され、誹謗中傷される事件がありました。この事例の場合は、匿名掲示板に勤務先の会社名や電話番号が書き込まれ、会社の業務電話に誤解に基づく誹謗中傷電話が掛かり続けた影響で休業を余儀なくされています。

【参考となる記事】
◆東名あおり事故でデマ被害、建設会社が投稿した8人提訴(朝日新聞デジタル)
https://digital.asahi.com/articles/ASM3743XKM37TIPE019.html
◆東名高速あおり運転事故でデマ書き込み、11人書類送検 被害社長は民事訴訟検討「転載した人も同罪」(ITmedia)
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1806/19/news115.html

 

また、匿名掲示板だけでなくLINE(ライン)を使った誹謗中傷として、LINEのグループで特定の個人のみ仲間はずれにする、いわゆる「LINE外し」なども「いじめ」の手法となっています。これも特定個人への誹謗中傷による誤解などが原因で、コミュニティ内部でいじめられることになってしまうことがあります。

(理由4)ハラスメントを受ける

最近は職場の業務としてイントラネット(社内用インターネット)上の掲示板や、LINEのグループ機能の活用なども常態化していますが、その中で様々なハラスメントの原因として誹謗中傷があげられる事があります。

誹謗中傷や悪口によって、それを見た職場同僚内の仲良しグループでの対人関係トラブル、あるいは職場内業務グループ内での上司や同僚からのパワーハラスメントやモラルハラスメント、セクシャルハラスメントに発展してしまうことなどが考えられます。

誹謗中傷には迅速に対処しましょう!

インターネットでの誹謗中傷は、SNSや掲示板などで発信者の確定することが難しい場合もあり、さらに拡散速度の速さなどから、早期の対応が必要になります。書き込み直後であれば、SNSや掲示板の管理者に削除の要請を行うことも可能です。さらにインターネットプロバイダに書き込みを行っているユーザーのIPアドレスの開示請求を行うなどの手段を取ることができます。

これらの方法は早期対応が重要で、書き込んだIPアドレスや日時を記録したログの保管期間は有限であり、またログ情報からプロバイダの契約者に辿れる期間も一般的には2ヶ月から6ヶ月程度と言われているので、時間が経つと開示そのものが不可能になります。加えて、複数の掲示板やSNSなどで誹謗中傷の書き込みが広範囲に拡散してしまうと、その書き込み全てに対応するには相当の時間と労力を必要になるなどするので、とにかく誹謗中傷に対しては早期対応が鉄則です。

「誹謗中傷」は法律違反。逮捕されることも。

  誹謗中傷は刑法では名誉毀損や侮辱罪などに該当し、逮捕される場合もあり得ます。民法では損害賠償金の請求対象です。

「誹謗中傷」に関連している法律・ルールは?

誹謗中傷に関連する法律は刑法および民法が該当します。次に挙げた刑法各条は、他人に対し、インターネットの掲示板や職場など私的公的を問わず不特定多数に対し誹謗中傷的な発言や書き込みを行った場合が対象です。

民法はこれらの誹謗中傷行為により心身や金銭的な損害を受けた場合、民法709条にもとづいて損害賠償請求を行うものです。

誹謗中傷に関係したルールとしては、不特定多数が目にするSNSやインターネット上の掲示板に、個人を特定できる形で悪口や住所、電話番号、顔写真など個人や組織に関する情報を書かないということになります。なお、個人名をダイレクトに書かなくても、職場や地名から容易に特定個人や組織の記載と類推できるような場合も、特定個人や組織に対する誹謗中傷に該当する場合があります。

誹謗中傷をすると警察に「逮捕」されますか?

誹謗中傷に関連した刑法各条には、いずれも勾留あるいは懲役がありますので、警察によって逮捕される可能性があります。ただし、侮辱罪と名誉毀損は親告罪になりますので、あくまでも誹謗中傷された本人が被害届、あるいは刑事告訴のための訴状を警察に提出することが前提になります。つまり被害を受けた本人が動かない限り、誰も助けてくれないのです。

この被害届は、「被害を受けました」という申告書で、受理した警察がその内容を判断し、必要な場合は加害者を逮捕するものです。告訴状は、「被害を受けため、相手を処罰してほしい」とする書類を警察に提出するものです。警察は告訴状を受理した時点で捜査を行い、必要であれば告訴された人を逮捕します。このように告訴状は、被害届よりも強い効力を持っています。

なお、信用毀損罪業務妨害罪脅迫罪は親告罪ではありませんので、誹謗中傷された本人の意思に関わらず、対象となる人物は容疑が掛けられた時点で逮捕される場合があります。

民事、刑事の違いとは?

民事訴訟と刑事訴訟とはいったい何が異なっているのでしょうか。両者の違いは当事者です。民事訴訟は、訴えた側の原告・訴えられた側の被告も共に個人あるいは法人(私人)となります。他方、刑事訴訟では原告は個人あるいは法人(私人)ですが、訴えた側の原告は国、すなわち国の代理である検察官になります。

ただし、前に書いたように刑事訴訟でも親告罪に含まれるもの、名誉毀損侮辱罪は、被害を受けた当事者(私人)が自ら告訴状あるいは被害届を警察に提出しないとなりません。

ではプライバシー権の侵害はどうでしょうか。例えばある人の過去の犯罪歴をSNSなどで書き連ねたとします。このプライバシーの侵害によりその人は社会的信用を毀損され、多大な損害を受けたとします。プライバシー権については法律的に対応する刑法条文がないため、この場合は社会的信用を失ったことに対する対応措置(書き込みの削除、損害賠償)などを行うよう、民事訴訟を起こすことになります。

ではネット上の殺害予告はどうでしょうか。特定個人や法人構成員に対するものであれば、警察は脅迫罪として対応してくれるはずですが、実際はなかなか手が廻らず、被害届を出してもすぐに解決しにくいことがあります。また、犯人に対して民事訴訟により、殺害予告による警備員費用や電車通勤をタクシー通勤への切り替え費用などの損害賠償を行うことになります。

また、特定の個人や時間、場所を指定しない殺害予告については、警察も把握しきれないことも多いため、動いてくれない場合があります。身の危険を感じるようなものについては、被害届けを出すなどで警察が対応するようにします。

誹謗中傷して、問われる「罪」は何ですか?

誹謗中傷については、名誉毀損罪侮辱罪脅迫罪信用毀損罪などが該当します。

  • 侮辱罪(刑法231条)
  • 名誉毀損(刑法230条)
  • 信用毀損罪業務妨害罪(刑法233条/信用毀損及び業務妨害)
  • 脅迫罪(222条1項、同2項)

 

なお、侮辱罪名誉毀損は親告罪なので、被害者本人が告訴状あるいは被害届を警察に提出しなければなりません。親告罪は告訴期間が定まっており、「犯人を知った日」から6か月以内に刑事告訴をしなければいけません(刑事訴訟法235条)。

また、名誉毀損罪の公訴時効は3年で(刑事訴訟法250条2項6号)。公訴時効とは、犯罪が終了してある期間が経過すると検察官が起訴できなくなるというものです。

例えばAさんにたいするBさんによる名誉毀損罪にあたる書き込みが掲示板に行われ、掲示板の管理人によって書き込み翌日に削除されたとします。Aさんがその事実を知ったのが4年後の場合、Aさんがその事実を知った日から6ヶ月以内に告訴しても、「掲示板管理人がBさんの書き込みを削除した時点で被害発生状態が終了した」と判断された場合、公訴時効が成立しているとされるため、検察官はBさんを起訴することができないということになります。

最近インターネット上での誹謗中傷として増加しているリベンジポルノ(別れた恋人や離婚した配偶者の裸体写真などを、復讐目的で不特定多数の目につくようにSNSや匿名掲示板などで公開する行為)は、名誉毀損やわいせつ物頒布罪だけでなくリベンジポルノ防止法、18歳未満であればさらに児童ポルノ規制法で罰せられることになります。また、民事訴訟での損害賠償の対象となります。

同様にインターネット上で増加しているプライバシー権の侵害については、前科犯罪歴病歴身体的特徴指紋などがプライバシー情報とされ、本人の望まない形で不特定多数に公開する場合が誹謗中傷になり、情報公開の差し止めや損害賠償請求など民事訴訟の対象となります。

(1)名誉毀損罪

インターネットでの誹謗中傷のうち、ある事実を示しつつ、公然と他人の社会的評価を低下させる行為を指します。

具体的な条文は以下の通りです。

名誉毀損(刑法230条)

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 

名誉毀損罪の要件として次のものがあります。

①公然の場であること
②社会的評価を低下させるものであること
③内容の真偽が分かる状態であること

 

例えば喫茶店でAさんが同級生のママ友同士の会話で「Bさんは犯罪歴がある」という内容の誹謗中傷をしたとします。それが事実(③)かつその場にいた3~4人だけにAさんが話したとしても、公然の場(①)での社会的評価を低下させる行為(②)として見なされます。不特定多数への拡散する可能性があり、場合によってはインターネット上でも匿名掲示板などに書き込まれるかもしれません。名誉毀損では、実際に広まった範囲ではなく、そこに至る「不特定または多数のものが認識できる状態」にしたか否かが「事実の摘摘示」として名誉毀損に問われることになります。ただし、名誉毀損は親告罪ですので、Bさん自身が被害届や告訴状を警察に提出しなければなりません。なお、BさんはAさんに対して社会的信用の毀損について損害賠償請求を行うため、民事訴訟で訴えることも可能です。

(2)侮辱罪

侮辱罪というのは事実ではない、根も葉もない誹謗中傷による噂などで相手の信用を毀損する行為に対するものです。

侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

 

例えばあるA社の営業部に勤めるBさんが、ライバル企業C社の営業部やD課長について、インターネット上の匿名掲示板内でC社とD課長の実名をそれぞれ明示して次のような書き込みを行ったとします。

「C社営業部のD課長はセクハラオヤジ、ハレンチ」
「C社営業部員は皆、陰険で子供じみている」

このように事実をとりあげなくても、誰もが見聞きできる場で個人や団体を誹謗中傷した場合、侮辱罪に問われます。

先に挙げた名誉毀損罪の要件として、①公然の場であること、②社会的評価を低下させるものであること、③内容の真偽が分かる状態であること、がありますが、侮辱罪では名誉毀損罪三要件での③が成立しない状態、つまり具体的な事実に基づかず、真実であるか確かめることができない場合でも罪に問われることになります。

似たような例で名誉既存罪について次のような場合が該当します。

「D課長はいつも女性社員に二人きりで飲みに行こうと頻繁に誘ってくる」

このように具体的な事実を摘示した名誉毀損と区別されるのです。

(3)脅迫罪

脅迫罪とは、文字通り、「相手を脅迫すること」行為をさします。『お前を見かけたら殺してやる』『会社にいられないようにしてやる』などのような発言や書き込みを、特定の人物を対象に行うことです。

脅迫罪(刑法222条1項)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
(同2項)
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

 

なお、脅迫罪は親告罪ではありません。また、匿名の相手であっても実在する人に対し殺害予告することは、刑法222条1項脅迫罪に該当する可能性が高いと考えられています。

ただし、問題点として、多くの場合は「被害者が被害の申告を行わない限り、警察が事実上捜査を行わない場合が多いということです。インターネットの場合、書き込みから加害者を特定するには「プロバイダ責任制限法第4条に基づく情報開示請求」を行う必要があり、加害者を特定できないと逮捕や損害賠償請求を行うことができません。

(4)信用毀損及び業務妨害罪

信用毀損罪とは、虚偽の情報を流布したり、他人を騙したりすることで他人の信用を毀損する犯罪です。

信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条/信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 

例えばグルメサイトで「あの店の肉料理が安価に提供できるのは、消費期限切れのアブナイ食材をタダで仕入れているから」のようなまったく事実と異なる虚偽の内容を書き込むなど、いわゆる不特定多数の人に対して風説の流布したような場合などが該当します。店舗が提供している商品や社会的信用、さらに支払い能力など幅広い分野での誹謗中傷行為を行ったとして罰せられます。

また、店舗に多人数で会席の予約を入れたのにキャンセルの電話を入れずに当日店に現れない、といった場合は「業務妨害罪」が成立する可能性があります。さらに何回も他人の名前で出前を依頼するような行為は「偽計」として、やはり「業務妨害罪」の対象になる可能性があります。

誹謗中傷をしたら、賠償金を払うのですか?

誹謗中傷により賠償金支払い、というニュースを見ることがありますが、全ての場合において支払わなければならないということではありません。

名誉毀損については次の条件に該当する場合、免責(罪に問われない)となります。

  • 公共の利害に関わるものか
  • 公益目的となるものか
  • 真実であるかどうか

 

また、亡くなった人の場合、名誉毀損にあたる内容が虚偽でなければ、名誉毀損罪には問われません。

これらに該当しない場合、民事訴訟により慰謝料(損害賠償金)を支払うか、あるいは示談金を支払わなければならない可能性があります。また、対象が芸能タレントなど有名人の場合、損害賠償金が高額になる傾向があることに注意が必要でしょう。なお、例えば会社の不正を告発する発言や書き込みなど、公共性や公益性、真実である場合、さらに真実が明らかになっていない場合でも客観性が高い資料に基づいた場合は 、名誉毀損にはあたらないとされています。

【参考となる記事】
◆インターネットで名誉毀損になる投稿と対処法
https://hibouchushou.net/contents/10029.php
◆名誉毀損で告訴したい!犯人を訴える5つの方法
https://hibouchushou.net/contents/10051.php
◆名誉毀損罪と侮辱罪|具体例で見る違いと対処法
https://hibouchushou.net/contents/10063.php
◆ネットに悪意あるコメントを書き込んだら逮捕されるケースはあるのか
https://hibouchushou.net/contents/10035.php

 

「誹謗中傷」対策のポイントを徹底解説

  インターネットでの誹謗中傷への対策には、ITと法律の知識が必須なので、IT、インターネットに詳しい弁護士に依頼するのが有効だよ。

誹謗中傷に、どんな「反撃」ができますか?

誹謗中傷に対してどのような対応を取るのが効果的でしょうか。

まず、誹謗中傷を行っている人の見当がついている場合について考えてみましょう。

ただ、漫然と見当がついている程度で本人に苦情を入れるのは、誹謗中傷に誹謗中傷で返している構図になりかねません。言い逃れのできないよう、しっかりした証拠を押さえ、その上でメールなり、簡易書留など配達記録が残る形での手紙などで、そのような行為を行っている本人に対して、誹謗中傷行為をやめさせるために「お願い」するのがベストです。

次に誹謗中傷を行っている人が誰か分からない場合の対応について考えてみましょう。誹謗中傷情報の発信者が誰か分からない場合は、SNSやネット掲示板の書き込みを見つけるたびにそれらのサービス運営会社に削除依頼を出します。また、書き込んだアカウントを特定するために「発信者情報開示請求」を行うことで、投稿者を特定することも可能です。

個人でできる対策は? メリット・デメリットを比較

誹謗中傷への対策は、インターネットへの向き合い方という基本的な対策と、誹謗中傷そのものへの対策の両面から行うと良いでしょう。

まず、インターネットへの向き合い方として、トラブルに巻き込まれたら、その時点でインターネット上では個人情報を原則発信しないようにする。SNS等の発言なども控えたり、アカウントを休止したりすることをおすすめします。メリットは一切情報を発信しないことで、誹謗中傷を行っている人間に少しでも余分な情報を与えないことがあげられます。デメリットは、インターネットでしか繋がりのない人との交渉が断たれてしまうことなどありますが、誹謗中傷が解決してから事情を説明する、という対応もあると思いますので、ぜひ検討してみてください。

なお、誹謗中傷に自力で対応する場合、必要に応じたITや法律の知識が必要で、さらにプロバイダなどへ通報し、誹謗中傷を削除してもらったり、様々な書類を作成したり提出したりする作業に時間を取られる可能性があります。自力で対応する場合、弁護士依頼費用が掛からないメリットがある代わりに、デメリットとしてかなり致命的ともいえる時間のロスがあげられます。

なぜ致命的かというと、インターネットプロバイダへのユーザーからのアクセス記録を残してある「ログ」は、書き込みがされた時点から2~3ヶ月間が保存期間のため、仮に半年後や一年後に問い合わせても「ログがないので分かりません」となる可能性があるからです。そのリスクをしっかりと認識していれば、自力での対応ということも手段としてありでしょう。

弁護士ならここまでできる! メリットとデメリットを比較

誹謗中傷に対してできるだけ速やかに適切な対応を取り、誹謗中傷を止めさせる、ということであれば、法律とITに詳しい弁護士に依頼するのが安心です。メリットとして、専門性が高く経験を積んでいる弁護士であれば、行われている誹謗中傷の状況から、どう対処すれば迅速な解決への糸口を掴めるか勘所を押さえていて、必要な対応に即座に実行できることが挙げられるからです。

インターネットでの誹謗中傷は、書き込み等、誹謗中傷一件ごとに対する頻繁な削除要請、さらにその情報の転載先などへの対応、インターネットプロバイダへの発信者情報開示請求など、様々な手続きと書類作成や依頼作業があり、一般人が普通に会社勤めをしながら手続きを、ログの消去期限内に滞りなく進めるのはかなり大変な作業になる可能性があります。このように時間との競争という点でも専門家へ依頼するのが確実です。

デメリットは着手金などお金が掛かること、また、対応項目が多かった場合、当初想定していた予算金額で収まらない可能性があることがあげられます。とはいえ、対応項目が多い場合は、個人での対応は限りなく難しくなることも考えられるので、その点は考慮しておいた方がよいでしょう。

誹謗中傷には、法的措置で対抗!

誹謗中傷やプライバシー侵害について、削除依頼や発信者への「お願い(依頼・要請)」など様々な手段があることを解説してきましたが、どうしても誹謗中傷が止まらない場合はどうすればいいのでしょうか。このような場合は最終手段として法的措置で対抗するしかありません。

「発信者情報開示請求」など特定の手順を知る!

ここで、発信者情報開示請求の流れを見てみましょう。

<匿名で誹謗中傷の書き込みを行っている場合>

インターネット上のSNSや掲示板で誹謗中傷を行っている人物が匿名で書き込みを行っている場合、発信者情報請求は2回、行う必要があります。

なお、この発信者情報開示手続きは訴訟や示談行為を含むため、本人自らが行うか、あるいは弁護士が受任する必要があります。弁護士資格を持たない人物や企業が委託・受任すると弁護士法で禁止されている「非弁行為」として違法になります。

[1]発信者情報(IPアドレス)開示請求(仮処分)の開始(1回目の開示請求)

被害者(もしくは受任した弁護士)が、誹謗中傷を掲載したサイト管理者に対するIPアドレスおよび書き込み日時(タイムスタンプ)の開示請求を行います。手続はテレコムサービス協会の発信者情報開示請求書を利用します。

サイト側が情報を開示しなかった場合、発信者情報開示仮処分の申し立てを行います。この場合は「保全事件の申し立て」という書類で行います。

 

[2]裁判所によるIPアドレス開示決定

裁判所による発信者情報(IPアドレス)開示請求仮処分が実施された後、被害者(もしくは受任した弁護士)がサイト管理者あるいは管理サーバ会社からIPアドレスと書き込み日時の情報を提出してもらいます。

 

[3]開示されたIPアドレス情報からどのプロバイダ経由で接続されたかを調査

被害者(もしくは受任した弁護士)が開示されたIPアドレスから、発信者(誹謗中傷の加害者)がどのインターネットプロバイダ(例:携帯電話会社やケーブルテレビ会社など)を利用してインターネットにアクセスしているかを調べます。また、誹謗中傷の書き込みが独自ドメイン上で行われている場合は、Whois検索を使ってドメイン名からサイトの登録者名(管理者名)やメールアドレスなどを調べます。なお、プロバイダにおけるログの保管期間は通常2~3ヶ月なので、必要に応じてログの保全の依頼手続きを行います。

 

[4]投稿者の特定のため、プロバイダに発信者情報開示請求を実施(2回目の開示請求)

誹謗中傷について書き込みを行った発信者がインターネットネット接続に利用しているプロバイダが判明したら、被害者(もしくは受任した弁護士)が、発信者(誹謗中傷の加害者)がインターネットに接続するために利用しているプロバイダに対し、投稿者の個人情報を開示するように請求します。

なお、個人情報の開示請求を受けたプロバイダは、発信者本人に個人情報を公開することに問題がないかを通知・確認を行います。通常、誹謗中傷を匿名で行っているような場合に、個人情報を公開しても良い、ということは拒否してくるのが基本なので、その場合は裁判でプロバイダに対して発信者情報の開示請求訴訟を行います。

 

<実名で誹謗中傷を行っている場合>

なお、実名アカウントでSNSや掲示板で誹謗中傷の書き込みを行っている場合は、直接、本人に対して、被害者あるいは受任した弁護士からメールや手紙で連絡を取り、それでも誹謗中傷を取り下げない、あるいは継続する場合は裁判に移行します。

【参考となる記事】
◆会社の悪口やネガティブな口コミ・評判をネット上から完全削除する方法とは?
https://hibouchushou.net/contents/10037.php
◆掲示板で実名を晒された場合の対処法と法的措置
https://hibouchushou.net/contents/10057.php
◆口コミサイトの削除依頼方法を専門弁護士が徹底解説!
https://hibouchushou.net/contents/10042.php
◆リベンジポルノの脅迫に遭った際の対処法
https://hibouchushou.net/contents/10048.php

 

「誹謗中傷」対策にかかる費用はどのくらい? 平均相場は?

  インターネットでの誹謗中傷対策は自身で行うことも可能ですが、弁護士を使い、より適切で迅速な対策をする手もあります。

個人で対策した場合、かかる費用は?

個人で誹謗中傷の加害者の個人情報を調査しようとしたらどのくらい費用が掛かるのでしょうか。手続きのみであれば、対策の費用は少なく見えますが、この他にプロバイダを調査するための通信費用、裁判所へ行くための交通費、さらに書類作成などで時間を使うことなども予め考慮しておく必要でしょう。

【表】個人で対策した場合と掛かる費用

手続き プロバイダに対して発信者情報開示請求(メール) プロバイダに対して発信者情報開示請求(テレコムサービス協会の発信者情報開示請求書) プロバイダに対する任意開示請求(裁判外請求)  発信者情報開示請求訴訟を行う場合
費用 通信費 封筒代、書留等郵便料金等 仮処分命令申立では申立て毎の手数料(2,000円の収入印紙、プロバイダへの送達用切手1,082円分)、申し立てが容認された場合、命令発令に必要な担保金の供託が必要(東京では一般的な相場として30万円)

発信者情報開示請求は通常訴訟として提起されます。

なお、この裁判は損害賠償請求の金額(訴額)が確定できない事件扱いとなり、訴額は一律とされ、裁判所における手数料はプロバイダ1社につき1万3000円

 

弁護士に対策を依頼するときの費用の相場は?

誹謗中傷対策を個人で行うのは不安だ、というような場合は、弁護士に依頼することになります。弁護士への依頼費用の見積りの難しさは、安く済ませればいいという訳でありませんので注意してください、確実性が高い、実績のある弁護士はそれなりの費用がかかるという点を念頭に置いて考えた方がいいでしょう。

法律相談料

まず、最初に法律相談を行う場合が多いと思いますが、これは無料の場合もありますが、初回のみ無料で二回以降は相談料として5,000円から1万円で有料という弁護士もいます。また、相談について電話可のところもあれば不可のところもあります。さらにネット面談可等として、24時間対応を謳い、LINEやメール、Webサイトでのサポートなどを行っている弁護士もいます。面談ですべての疑問が一度に解決されるとは限りませんので、自分の状況にあった相談対応をしてもらえる弁護士を選ぶようにしましょう。

誹謗中傷の投稿を削除する費用

誹謗中傷の削除は、交渉による裁判外のもので削除一件あたり着手金5万円から、成功した場合の同じく一件あたり報奨金も5万円からが目安です。着手金+報酬金はおおよそ一件当たりで少なくとも10万円程度が必要になる計算です。

削除請求で仮処分・裁判となった場合は削除一件あたり着手金10万円から40万円程度、成功した場合の同じく一件あたり報奨金も10万円から20万円程度が目安です。着手金+報酬金はおおよそ一件当たりで少なくとも20万円程度が必要になる計算です。誹謗中傷の書き込みに気がつかず、拡散されてからの削除申請を行う状況では費用はもっと掛かる可能性があります。

開示請求(投稿者特定)費用

誹謗中傷の加害者の特定のためのプロバイダに対して開示請求(交渉・裁判外)は、一件あたり着手金についておおよそ20程度から、開示が成功した場合の報酬金は一件あたりおおよそ20万円からが相場です。着手金+報酬金で40らの費用がかかることになります。

同じく誹謗中傷の加害者の特定のためのプロバイダに対して開示請求(訴訟)は、一件あたり着手金についておおよそ20万円程度から、開示が成功した場合の報酬金は一件あたりおおよそ10万円からが相場です。こちらも着手金+報酬金で30万円程度からの費用がかかることになります。

損害賠償請求の費用

それでは損害賠償請求を行う場合の費用はどうなるでしょうか。損害賠償請求と言うことで民事訴訟になります。

損害賠償請求(交渉・裁判外)、いわゆる示談に持ち込んだ場合、着手金が10万円から、報酬金は損害賠償金額の成果額の16%が相場になります。

なお、名誉毀損について刑事告訴する場合は、民事訴訟結審後に警察に被害届を提出し、加害者に刑事罰を受けてもらうことで再発防止とすることもあります。

<誹謗中傷対策費用の目安一覧表>

  着手金 報酬金
法律相談料 無料~ ---
投稿削除費用(交渉・裁判外) 5万円~ 5万円~
投稿削除費用(交渉・裁判外) 10万円~40万円 10万円~20万円
開示請求(投稿者特定)費用(交渉・裁判外) 20~30万円 20万円~
開示請求(投稿者特定)費用(訴訟) 20万円~ 10万円~
損害賠償請求(交渉・裁判外) 10万円~ 成果額の16~30%
損害賠償請求(訴訟) 20万円~ 成果額の16~30%

 

「誹謗中傷」対策にかけた「お金」を取り戻す方法は?

  誹謗中傷対策にはお金がかかりますが、加害者から損害賠償金を取ることで埋め合わせできる可能性があります。

発信者に請求できる慰謝料の目安は?

ここでは誹謗中傷による損害賠償金額の目安について、名誉毀損侮辱罪信用毀損業務妨害プライバシーの侵害などについてそれぞれ解説します。

なお、本人同士が話し合ってもなかなか解決しない案件でも、弁護士が前面にたって請求することで、適切な手続きの選択や相手への心理的プレッシャー等の効果で解決や示談金支払いが早まることがあります。例えば月単位で時間を要する裁判になる前に示談で解決し、損害賠償の支払いが行われる場合があります。

名誉毀損での損害賠償金、示談金の目安は?

一般的な名誉毀損の場合は、内容にもよりますが一般人の損害賠償金は10~50万円程度になります。示談の場合はその半額程度となることもあります。ただし、被害者が自殺した場合など、損害賠償金の金額は遙かに高額になることがあります。

事業主向け(法人)の場合は、営業妨害による売上の低下などもあり、慰謝料は売上低下の補償も含めて50~100万円程度になります。示談の場合はその半額程度になる場合があります。

芸能人や政治家など著名人の場合、名前に傷が付くような名誉毀損はかなり高額な損害賠償金を求められることがあり、100~200万円程度ですが、場合によっては数百万円に及ぶこともあります。示談に際してもそれらの金額を反映した金額になります。なお、損害賠償金の他に、裁判の判決結果によっては訴訟の弁護士費用について、加害者負担となる場合もあります。

侮辱(名誉感情の侵害)での損害賠償金、示談金の目安は?

それでは侮辱による損害賠償金はどのくらいになるのでしょうか。実は名誉毀損よりもやや低めの金額相場となっていて、10~50万円程度となっています。示談の場合は10~30万円程度が相場だとされています。侮辱罪が名誉毀損よりも金額が低めなのは、侮辱罪の違法性が民事・刑事ともに名誉毀損よりも少ないと考えられているためです。ただし、こちらも被害者が自殺した場合など、損害賠償金の金額は遙かに高額になることがあります。

信用毀損・業務妨害(事業主向け)での損害賠償金、示談金の目安は?

企業や販売店、病院などに対して、私怨などから事実に基づかない誹謗中傷や風評を流布させ、信用を毀損したり、営業を妨害したりした場合、どのくらいの損害賠償金を支払わなければならいないのでしょうか。

個人における名誉毀損の場合、「個人の苦痛」という形で損害賠償金が算定されますが、事業主(法人)の場合は精神的苦痛ではなく、社会的評価や営業上の不利益として算定され、おおよそ100万円以内となるのが通例です。示談の場合はこの金額よりも少なくなります。なお、この場合も裁判の判決結果によっては訴訟の弁護士費用について、加害者負担となる場合もあります。

プライバシー侵害での損害賠償金、示談金の目安は?

プライバシー侵害の基本要件として、個人情報、公開されると不安や不利益を受ける情報、本人以外に公知されていない未公開情報が法的に侵害された場合、の三要件を満たしていることが前提となります。芸能人や政治家であれば隠し子や病状などの曝露、一般人であれば過去の犯罪歴や病歴、リベンジポルノの画像や音声などの公開がプライバシー侵害に該当します。

これらプライバシー侵害の損害賠償金は、一般人で5~10万円、事業者や著名人では50~1000万円程度が相場になります。なお、示談の場合はこれより少ない金額になります。

<◎表:慰謝料(損害賠償金)の目安一覧表>

  損害賠償金
名誉毀損(一般人) 10~50万円
名誉毀損(事業主) 50~100万円
名誉毀損(芸能人や政治家など著名人) 100~200万円
侮辱(名誉感情の侵害) 10~50万円
信用毀損・業務妨害(事業主) 100万円以内
プライバシー侵害(一般人) 10~50万円
プライバシー侵害(事業主・著名人) 50~1000万円

 

「誹謗中傷」対策には、どれくらい時間がかかる?

  誹謗中傷対策は期間(時間)との戦いになることが多いよ。加害者の特定は最長3ヶ月以内でも、裁判には1~2年程度かかることもあるんだ。

個人だと時間はもちろん、体力、気力が必要

インターネット上の誹謗中傷の加害者特定には、インターネットでの調査と特定に実社会とは異なった知識や手法が必要になります。さらにインターネットプロバイダのログ保存期間2~3ヶ月というタイムリミットもあるため、誹謗中傷が行われていることに気がついた時点で早急に対処しないと、時間切れで加害者を特定できないことも念頭に置く必要があります。

つまり誹謗中傷を受けていることに気がついた時点で、できることを全てする必要があるということになり、休日などの余暇時間だけでなく、場合によっては勤務時間などから時間を割く必要が出る可能性があります。加害者側はストレスや私怨解消で軽い気持ちで行っているかもしれませんが、被害者側にとって加害者を特定する立証責任について作業と期間(時間)で多くの労力が必要になってきます。

弁護士に依頼するとお金はかかるが早くて確実

インターネット上の誹謗中傷の加害者の特定は、早期に対策を取らないと加害者の特定が出来なくなる可能性が高まる上に、誹謗中傷の書き込みが転載などにより広範囲に拡散してしまう可能性があります。

一刻も早く問題を解決し、平和に社会生活を送るための信用低下を最低限に食い止めるためにも、このような問題でこそIT上のトラブルに強い弁護士へ依頼を検討することをおすすめします。もちろん弁護士に依頼することで様々な費用が必要となりますが、トラブル対応のプロフェッショナルであれば、過去の事案対応で磨いた知識と経験で問題解決の糸口を早期に見つけてくれるでしょう。

なお、弁護士事務所によって、初回の相談が無料というところもありますので、まず、そういった窓口を活用することをおすすめします。

誹謗中傷を受けたら、専門の弁護士に相談

  誹謗中傷を受けた場合、本人による対応では時間切れもあり得るので、弁護士の活用も検討したいところだね。

弁護士に相談するメリットは?

インターネット上の誹謗中傷などの書き込みについて、弁護士以外に司法書士など様々な資格をもった人達、そしてIT系の知識はあるが資格を持たない削除代行業者が「誹謗中傷の削除」を謳っています。

弁護士に依頼するより金額が安いなどメリットを謳っています。たしかに「削除」依頼という仕事内容だけであるならば、誰が依頼をしても問題はありません。

しかし、誹謗中傷に関連して損害賠償の示談交渉についてどうでしょうか。実は損害賠償請求やその交渉など「権利を主張して相手方に対して何かを請求する」というもので、「法律事件」「法律事務」に該当し、それについて携わることができるのは弁護士だけです。

同じ士業である司法書士、行政書士が行おうとすると「非弁行為」となります。むろん、何の資格も持たない場合も同様です。誹謗中傷を削除し、引き起こされた損害の賠償金の請求も行うなど一括してすべて対処できるのは弁護士だけなのです。

インターネットの誹謗中傷は専門の弁護士へ

当然ですが、弁護士にもそれぞれ専門性があり、得意分野や過去の実績について調べて依頼する必要があります。離婚や遺産相続問題などに強い弁護士がいるように、インターネットでの誹謗中傷もやはりIT・インターネット系に強い専門弁護士が存在します。

インターネットでのトラブルの難しいところは、利用者だけでなく様々なサービスの運営側についても匿名性が高い、あるいは海外に拠点があって対応が一筋縄ではいかないなど様々です。さらにIPアドレスなどIT技術の専門知識も必要です。誹謗中傷の書き込みについて、運営側に削除を依頼するにも掲示板それぞれに独特の作法があるなど、SNSや掲示板のトラブル対応の手法について熟知していることが、素早い解決には必要です。依頼を考えた際は、ぜひ、この点を念頭に弁護士を選ぶとよいでしょう。

弁護士への相談前に準備しておくこと

では、実際に弁護士に誹謗中傷の書き込み削除を依頼するにはどうしたらいいのでしょうか。まず、実際の誹謗中傷の書き込みを証拠として保全しておくことが必要です。できれば誹謗中傷を見つけたそのタイミングで行った方が良いでしょう。

書き込みがなされたSNSや掲示板の正式名称、URL、スレッド名称あるいはコミュニティなど、日時、SNS・掲示板にどのよう状況で書き込まれたかできるだけ客観的に分かるようにしたメモ書きを作っておきます。

そしてその書き込み状態をスクリーンショットとしてキャプチャ、あるいはPDF化や印刷して、弁護士に依頼する際、書き込まれた誹謗中傷の文章を正確に伝えることが出来るようにしておきます。パソコンやスマートフォンでは画面のスクリーンショットのキャプチャは容易に行えます。また、スクリーンショットのキャプチャを残す、あるいはPDF化や印刷するためのフリーソフトなどもありますのでそういうものを活用するのも良いでしょう。

弁護士に対策依頼する手順

①無料相談

弁護士に依頼する前に、まず、法律関係事務所の無料相談を活用してみましょう。インターネットで検索キーワード「インターネット」「誹謗中傷」「無料相談」などの組み合わせで出てきた弁護士や法律事務所の中から、時間帯や対応地域で自分の条件に合致する弁護士をピックアップします。相談も初回無料や初回1時間まで無料などいろいろありますので、自分の希望にあった条件で選ぶといいでしょう。

②見積もりと依頼

弁護士に依頼する際に気になるのが料金です。インターネットにホームページを持っている弁護士の場合、ほぼ料金を確認することができるはずです。その料金表で着手料や削除費用、相手との交渉などをどのくらい費用がかかるのか想定しておきましょう。

③着手

弁護士に依頼する場合、インターネット上の誹謗中傷の書き込みの削除だけ、あるいは名誉毀損やプライバシー侵害の告訴などまで検討している場合があると思います。裁判ともなると着手金だけでも個人の出費としては結構な費用になることもあるので、支払い方法についても予め検討しておく必要があります。弁護士や法律事務所によっては分割払いに対応できる、と記載しているところもありますので、場合によってはそのような費用の支払い方法も検討してみるとよいでしょう。

「誹謗中傷」の実態 ~被害と対策の実例紹介~

  インターネットの誹謗中傷の事例をドキュメンタリー風に、簡単に紹介します。

(1)「企業」の被害事例

2000年代初期、匿名掲示板2ちゃんねる内の「悪徳病院告発スレッド」で、ある動物病院に対し固有名詞を出した上で「やぶ医者」「悪徳病院」などと誹謗中傷となる書き込みがなされた。病院側は書き込みを把握した後、2ちゃんねる運営に当該書き込みについて削除をもとめたが、運営側は削除しなかったため、病院が名誉毀損で運営側の管理責任を問う裁判を起こした。裁判における争点は「書き込みが名誉毀損にあたるか」というものと「2ちゃんねる運営に対して削除など管理責任を問えるか」の2つだった。

当時の2ちゃんねるは完全匿名を謳い、企業別スレッドでは内部告発的な書き込みや誹謗中傷などが書き込まれることがあった。それらに対して2ちゃんねる独自の運営ルールの下で削除対応を行っていたが、この動物病院の誹謗中傷の書き込みに関しては、削除申請の記載不備を理由に対応がなされていなかった。

一審では原告の訴えが概ね認められ、損害賠償金400万円の支払いと書き込みの削除が命じられた。2ちゃんねる運営はこれを不服として控訴したが高裁および最高裁でそれぞれ却下され、一審判決が確定した。

【参考URL】
◆東京高裁、動物病院名誉毀損事件の判決情報をWeb上に公開(インターネットウォッチ)
https://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0127/court.htm
※記事内判決文リンクはすでにリンク切れ
◆大阪大学サイト内の判決文コピー
http://daleda.law.osaka-u.ac.jp/~material1/0103defamation/2ch-1.html

 

(2)「芸能人」の被害事例

芸能人でお笑いタレントのAさんが、「ある地域で発生した未成年者による女子高生殺人事件の実行犯だ」という誹謗中傷を長期に渡って受けていた事件。

1999年頃から匿名掲示板などで、Aさんの名前を出して殺人事件の実行犯人とするデマが広がった。女子高生殺人事件の犯人が未成年であったため、報道等で犯人の名前などが明らかにされず、そこで出身地などのプロフィールからAさんが実行犯だという根も葉もないデマが広がった。おおよそ10年近くにわたってデマが流れ続けたが、2008年秋に誹謗中傷を書き込んでいた人物が特定され、19人が一斉に検挙された。一部は書類送検されたものの、19人の居住地が日本各地に及んでいたことで民事訴訟による損害賠償請求は労力に見合わないと判断したAさんは民事訴訟を見送り、検察の判断を待った。

その後、検察は「本人たちは反省している」として全員不起訴処分にした。この不起訴処分にAさんは納得していなかったが、この結末を受け入れた。

ただ、2017年にもAさんのブログに対して殺害予告コメントの書き込み等が発生しており、インターネット上で拡散した誤った情報の訂正がいかに難しいかを示している。

【参考URL】
◆「人殺しは死ね」デマと闘った18年 スマイリーキクチ(朝日新聞デジタル)
https://digital.asahi.com/articles/ASK6H42X3K6HUEHF005.html

 

(3)「職場」での被害事例

ある自治体の職員が仕事上の注意をした上司や同僚に「ばか」「あほ」などの暴言を繰り返し、中傷する電子メールを他の職場の無関係な職員に100回以上送信したなどを理由に停職6ヶ月の懲戒処分となった。このように根拠のない個人的な感情でも反復してメール等送信することで、懲戒処分の対象となることがある。

類似した事例としてはある民間企業で正社員が、上司や同僚、さらに社長に対して職場の同僚がいる前で暴言を繰り返し、また、根拠のない中傷を含む批判メールを送るなどを繰り返した結果、1年後に解雇された。解雇された社員は地位の保全を求めて裁判で争うこととなった。一審判決では会社側の主張を認め、職場での発言やメールなどを根拠に「会社と社員の関係性は破壊しており、回復は困難である」とした。

このように誹謗中傷により処分や解雇等に至ることがある。特にメールやSNSでの発言、ブログの書き込みは証拠性が高く、裁判になった場合に判決理由の要因とされることがある。

【参考URL】
◆都職員が同僚ら中傷するメール100回超送信し処分
https://www.nikkansports.com/general/news/201905240000997.html
◆セコム損害保険事件
http://roumucouncil.blog.jp/archives/4410723.html

 

(4)「インターネット」で被害を受けた事例

5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)、爆サイなどの匿名掲示板で見られるの誹謗中傷としては、個人名や携帯電話番号を書き込む(いわゆる「晒し上げ」行為)やその上での誹謗中傷、あるいは特定業界や企業スレッドでの個人名を出してのクレームや悪口などが該当する。

インスタグラム、LINE、Twitter、Facebookのトラブルとしては、個人が他人に対して誹謗中傷となる書き込みを行ったり、他人による誹謗中傷発言を興味本位で転載・拡散してしまったりすること等が頻発している。また、他人への粘着行為、いわゆるネットストーカー行為も多い。

さらにこれらのSNSで時折見られるのがいわゆる「バカッター」行為と呼ばれる、企業の社員やアルバイトが職務規程や社会常識を逸脱した行為を行い、仲間内だけで楽しむつもりで写真を投稿し、それがSNS上で広範囲に拡散されてしまい企業価値の毀損や信頼を落としめる行為として炎上したもの。結果として投稿した本人は解雇となったり、さらに炎上の「舞台」となった店舗が閉店に追い込まれたりすることがある。

メルカリではネットオークションでの詐欺行為(商品を送らず、その「写真」を送る行為)や一方的な取引キャンセルなどが代表的なトラブルとなっている。

まとめ

ネットで誹謗中傷されたら、まず、すばやく行動することが大切なのね。
予想もしない酷い言葉を投げかけられたり、攻撃されたりして、心理的につらいところだけど、まず、証拠を細かく保管して、冷静に次のアクションに移ろう。
削除依頼とかなら私もできそうだし。
そうだね。ただ、自分で削除依頼すると、それがそのまま<丸見え>になる掲示板もあるから慎重に。
ITに強い弁護士に依頼することも考えておいた方が良さそうね。
確かに費用はかかるかもしれないけど、ストレスなく、確実にできるのがメリット。賢く活用したいね。
そうね。何より、一人で悩まないのがポイントかもしれないわね。

 

 

弁護士法人ATB
これまで、インターネット匿名掲示板等での『誹謗中傷』に悩む企業や人の相談を 1500 件以上受け、迅速に解決してきた弁護士事務所です。
「5ちゃんねる(2ちゃんねる)」「爆サイ」「ホスラブ」「Twitter」など、数10種類以上のWebサイト、SNS、掲示板の投稿への削除依頼、発信者情報開示請求(投稿者の特定)等に、プロフェッショナルとして幅広く柔軟に対応しています。