刑事告訴の流れ|名誉毀損で逮捕された事例
刑事告訴とは、警察に「この人は罪を犯したので、処罰してください」と申し出ることです。相手からの被害を報告する『被害届』とは違い、刑法による処罰を求めるのが『告訴』になります。
この記事では、刑事告訴の流れや名誉毀損の逮捕事例、被害にあった場合の対処法についてご紹介します。
刑事告訴の流れ|告訴・捜査・起訴
刑事告訴は警察署に告訴状を提出することからはじまります。
告訴状には、形式などが特に指定されていませんが、一般的に記載しなければならない事項などがあります。
この項目では、告訴から裁判や示談までの流れについてご紹介します。
警察署に告訴状を提出する
刑事告訴をするには、告訴状を作成し、管轄の警察署へ提出する必要があります。
告訴状は、特に形式が決まっていませんが、以下の内容を記載します。
告訴状の記載事項 |
告訴人・非告訴人の住所(代理人がいる場合は事務所住所など) 告訴の根拠となる法律違反 告訴する理由 証拠資料 添付書類(あれば) |
告訴状に記載する、告訴の根拠となる理由・法令違反などは情報の信ぴょう性が問われます。そのため、告訴状は個人ではなく弁護士などの代理人が作成するのが好ましいとされています。
被害届との違い
告訴状と被害届は、全く違うものです。被害届は、相手から受けた行為の被害を警察に報告するものなので、捜査をするかの判断は警察の判断になります。
一方、告訴状は刑事告訴を行うためのものなので、警察に捜査をお願いすることが目的となります。
警察による呼び出し
告訴状が受理され、警察側で捜査の必要があると判断された場合、通常は警察側から相手に呼び出しを行います。これは任意での事情聴取にあたります。
呼び出しでは、相手を警察署に呼び出して話を聞く場合と、在宅で話を聞く場合があります。
被疑者の逮捕
罪を犯したと疑うに足りる相当の理由がある場合について、任意による事情聴取に応じなかったり、証拠の隠滅・逃亡の可能性があったりする場合には、警察側が被疑者を『逮捕』することがあります。
逮捕後の被疑者の取扱
逮捕後、被疑者は以下のような手順を踏まえた上で、起訴・不起訴が判断されることになります。逮捕されてから裁判に至るまでは最大で23日間かかることになります。
- 逮捕後、警察の取調べを経て、48時間以内に検察へ送致
- その後、検察は24時間以内に勾留するか釈放するかを判断
- 勾留が決定された場合、約10日〜20日間の勾留
検察官による起訴・不起訴の判断
刑事事件では、検察官が起訴した際に裁判が行われます。検察官は、警察からの捜査報告などから、告訴された被疑者の処罰の必要性があるかを判断します。
この際、有罪になる可能性が高ければ起訴され、裁判になります。また、有罪ではないと判断した場合は不起訴となるのです。
裁判
検察官が起訴と判断した場合は、裁判が行われます。
現状、日本では刑事裁判の有罪率が99.9%とされています。そのため刑事裁判では、有罪無罪の争いよりも減刑や執行猶予判決について争われることが多いです。
示談
示談とは、和解のことです。刑事事件では起訴前や裁判時に、被疑者側から代理人を通して示談交渉を持ちかけられることがあります。
示談では、示談条件や示談金などを話し合い、お金を受け取る代わりに告訴を取り下げる約束をすることなどの話し合いが行われます。相手に反省の色が見られたり、告訴人自身が問題をこれ以上掘り下げたくない場合などに告訴を取り下げることもあります。
名誉毀損・侮辱は親告罪
SNSや掲示板などのインターネット投稿では、名誉毀損罪や侮辱罪などのトラブルが多く発生します。
これらの罪は親告罪といい、被害者側から申告しなければ罪として問うことができません。
ご自身がSNSや掲示板などでトラブルに巻き込まれた際は、弁護士に相談し、解決先を考えていきましょう。
名誉毀損で刑事告訴された事例
この項目ではSNSや掲示板などの投稿によって起きたトラブル、逮捕事例などをご紹介します。
ネットストーカーから名誉毀損で逮捕
ネット掲示板で女性中傷した事件
インターネットの掲示板サイトに女性を中傷する投稿をしたなどとして、男性をストーカー規制法違反と名誉毀損(きそん)の疑いで逮捕した。
SNSや掲示板で、個人を誹謗中傷したり付きまとい行為をしたりする場合も名誉毀損として刑事告訴される可能性があります。
風俗店での勤務歴や評判などを投稿し逮捕
風俗店女性の個人情報暴露 客だった男を名誉毀損容疑で逮捕、愛知
愛知県警中川署は28日、風俗店に勤めていた名古屋市中川区の女性(33)の名前など個人情報をインターネット上で拡散したとして、名誉毀損の疑いで、長野県豊丘村、職業不詳の男(35)を逮捕した。「覚えていません」と容疑を否認しているという。
接客・サービス業などでは、お客さまと触れ合うなかで、どうしても顔や名前を覚えられたり評判をSNSや掲示板上に投稿されたりすることがあると思います。
特に、夜のお仕事をしている場合は、働いていることを隠したい方も多いので、拡散力の強いインターネット投稿は実生活への被害が大きくなってしまうこともあるでしょう。
このような場合、刑事告訴のほか、投稿の削除や相手への損害賠償請求などの解決策もあります。
あおり運転の加害者の情報を拡散し11人書類送検
東名あおり事故でデマ=名誉毀損容疑で11人送検-福岡県警
神奈川県内の東名高速道路で昨年6月、「あおり運転」を受け停止した乗用車がトラックに追突され夫婦が死亡した事故をめぐり、起訴された男の姓と同名の建設会社(北九州市)をインターネット上の書き込みで中傷したとして、福岡県警は19日、名誉毀損(きそん)容疑で同市小倉北区の無職男性(49)ら9道県の11人を書類送検した。
名誉毀損トラブルは、いつのまにかご自身が加害者になってしまうこともあります。悪いことをした人を懲らしめるために、SNSや掲示板でいわゆる『晒し上げ』のようなことをすると、晒し上げた人やそれに加担した人として刑事告訴されてしまうこともあるのです。
名誉毀損には告訴期間がある
名誉毀損や侮辱の刑事告訴は、『告訴期間』というものがあります。
告訴期間とは、相手を告訴できる期間なので、名誉毀損が行われていると知っていながらトラブルを長期間放置していると告訴期間が過ぎてしまい相手を告訴できなくなってしまうのです。
名誉毀損の告訴期間は、相手を知ってから6ヶ月間。SNSや掲示板などの投稿でトラブルに巻き込まれた場合は、なるべく早く弁護士に相談するなどで解決策を考えましょう。
誹謗中傷・名誉毀損トラブルは弁護士に相談
SNSや掲示板での誹謗中傷・名誉毀損トラブルは、弁護士に相談することが先決です。
トラブル解決のための投稿の削除、刑事告訴や民事訴訟を踏まえた手続き等は、現実問題として弁護士名義で行ったほうがスムーズに進めることができます。
当事務所では無料相談も受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。