リベンジポルノの裁判は2種!犯人を特定する法律とは
2019年5月28日更新
リベンジポルノの被害に遭った場合、民事裁判で慰謝料を請求したり、刑事裁判により刑事的責任を問える可能性があります。
各裁判は、手続きや請求する内容などが異なるため『リベンジポルノをどのように解決したいか』によって選択しなければいけません。
この記事では、リベンジポルノに関わる法律や裁判事例、刑事裁判と民事裁判の違いなどについてご紹介します。
リベンジポルノの裁判は2種類!刑事裁判と民事裁判の違い
裁判には『刑事裁判』と『民事裁判』の2種類があります。ここでは、この2つの裁判の違いについてご紹介します。
刑事裁判で有罪・無罪を判断してもらう
刑事裁判は、容疑者が逮捕されるなどして刑事事件となって、はじめて起訴するか・しないかが判断されます。刑事裁判を提起するのは検察ですが、リベンジポルノは親告罪といい、被害者が告訴をしない限り、検察が勝手に起訴することはできません。
刑事裁判は、法に従い有罪・無罪を判断するものですので、一緒に慰謝料を請求することはできません。どうしても慰謝料を請求したい場合は改めて民事裁判を被害者が提起するしかありません。
刑事裁判の結果、有罪が確定した場合、罰金または懲役が科せられるでしょう。
判決においてリベンジポルノの被害防止を目的とする、『リベンジポルノの防止法』が適用された場合、3年以下の懲役または、50万円以下の罰金が科せられます。
起訴前なら示談で問題を解決する方法もある
示談は、逮捕された後起訴せずに話し合いによって、問題を解決する方法です。多くの場合、容疑者から示談金が支払われ示談成立になります。
示談金は、慰謝料の相場を目安にしますので、50~100万円が相場かと思われます。ただし、当事者間の話し合いによりますので、弁護士に代理交渉を依頼することで、相場以上の金額を望めるかもしれません。
民事裁判により慰謝料を請求する
民事裁判は、民間で起こったトラブルを民法に則り解決する方法です。民法は、第709条で不法行為による慰謝料(損害賠償)の支払いが定められていますので、慰謝料請求することができます。
また、刑事裁判では、検察が公訴提起し、裁判費用は原則として被害者が負担することはありません。
しかし、民亊裁判は正当なり理由があるのであれば、誰でも提起することがでる代わりに、費用は自己負担になります。
リベンジポルノに関する刑法
ここでは、リベンジポルノで裁判が起きた場合に、該当する可能性のある刑法についてご紹介します。
リベンジポルノ規制法
第三者に見られることを目的としていない性的な画像や動画を、本人の許可なく不特定多数の人物の目に触れる場所で公開した場合、『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)』に違反する恐れがあります。
『性的な画像や動画』の定義として以下のようなものが対象になります。
- 性交・性交類似行為(性交を模して行われる行為)
- 撮影対象者の性器または、撮影対象者が性器を触った上で、性的興奮を煽るもの
- 性的な部分が強調・露出しており、衣服の一部またはすべてをまとっていない上に、性的興奮を煽るもの
また、個人が特定できる情報が含まれていることが前提となります。
このような画像を公開した人は『公表罪』として、50万円以下の罰金または3年以下の懲役。他人に公開させる目的で画像や動画を提供した人は、『公表目的提供罪』として、30万円以下の罰金または1年以下の懲役が課せられると考えられます。
わいせつ物頒布等
性的な図画や文書、電子記録を、不特定多数の人物が閲覧できる状況にして、公開したり配布し広めたりした場合、『わいせつ物頒布等(刑法第175条)』に該当する可能性があります。
該当した場合、250万円以下の罰金または2年以下の懲役が科せられ、状況によっては両方の罰則を受けることになります。
名誉毀損
不特定多数の人物が閲覧できる場所で、他人の名誉を傷つけた人は、それが事実か嘘かに関わらず『名誉棄損(刑法第230条)』50万円以下の罰金または3年以下の懲役が科せられるでしょう。
侮辱罪
不特定多数の人物の目に触れる場所で、事実の有無に関わらず他人を侮辱した人は『侮辱罪(刑法第230条の2)』に該当することになります。
性的な画像で脅された場合に該当する可能性のある刑法
「周囲に見せる・配る」などと脅された場合|脅迫罪
被害者またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し、危害を加えると脅した人は『脅迫罪(刑法第222条)』に該当します。
30万円以下の罰金または2年以下の懲役に科せられるでしょう。
脅迫によりお金を要求された場合|恐喝罪
他人を恐喝して、財物(金銭など)を受け取った人は、『刑法第249条』に該当し、10年以下の懲役が科せられます。
「交際を続けろ」と無理強いされた場合|強要罪
脅迫罪のように、危害を加えることを伝えたり、暴力を加えたりして義務のない行為を行わせた場合、『強要罪(刑法223条)』に該当し、3年以下の懲役が科せられます。
実際に起きたリベンジポルノの判例
ここでは、実際に起きたリベンジポルノ概要と判決についてご紹介します。
初めてリベンジポルノ防止法が適用された判例
元交際相手の裸の写真を何度もネットに投稿し、公開した容疑者が、脅迫やリベンジポルノ防止法違反の罪に問われ、懲役2年6ヶ月、執行猶予4年の判決を言い渡された。
裁判官は、他人の恐怖心を理解できない容疑者の態度に対し、認知のゆがみを解消する必要があるとして保護観察処分をつけた。(参考:産経ニュース)
『リベンジポルノ』ではないとして一部無罪になった判例
元交際相手の裸の画像をネット上に公開したとして、リベンジポルノ防止法違反の罪に問われていた男性が、控訴審判決で、ネット上に保存はしたが、公開はしていないとして、『リベンジポルノ防止法』に違反していないという判決を下した。
ただし、被害者に対し画像をネタに脅迫したとして懲役1年3年の執行猶予とした。(参考:SANSPO.COM)
裁判前に弁護士依頼で犯人を特定!
リベンジポルノの被害に遭った方のなかには、犯人に心当たりがない方もいるでしょう。そのような場合は、慰謝料請求するにしても、警察に早く逮捕してもらうためにも犯人の特定が求められます。
弁護士に依頼し『プロバイダ責任制限法』に基づき、個人情報の開示を求めることで、犯人の特定が期待できます。ここでは、どのような法律なのかについて解説します。
プロバイダ責任制限法とは
プロバイダ責任制限法とは、正式に『特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律』といいます。
掲示板やSNSなどの管理者(プロバイダ)は、発信者の『表現の自由』という権利を守る責任と、被害を救う『被害者救済』の責任を負っています。
ただ、リベンジポルノなど、他人の名誉を棄損したりプライバシー権の侵害をするような情報が発信された場合、『表現の自由』と『被害者救済』という2つの権利の板挟みになり、両者から訴えられてしまうかもしれません。
そのようなことにならないために、プロバイダ責任制限法では、他人の名誉を棄損するような情報が発信された場合に、管理者が情報を削除したり、被害者に発信者の個人情報を開示できるように定められています。
そのため、被害に遭った場合はサイトの管理者に請求することで、発信者の個人情報を得ることができるのです。
どのような個人情報が分かるのか
開示される個人情報は以下のようなものになります。
参考リンク:プロバイダ責任制限法について |
そのため、詳細まで知ることができ、たとえ犯人と無関係だった場合でも特定することができます。
請求できる人は限られている!
個人情報開示を請求できるのは、原則として被害者自身または弁護士のみとなっています。これは、開示した詳細な個人情報を悪用されないためです。
開示は慎重に行われ、被害者であっても開示請求を拒否されるケースもあるのです。そのため、請求する場合は弁護士を通し開示請求書を作成してもらうようにしましょう。
もし、開示を断られた場合、裁判で開示を求めるしかありません。はじめから弁護士に依頼しておけば、そのような手間が省けますし、裁判になった場合でも弁護士に対応してもらえるので、安心です。
まとめ
リベンジポルノ防止法で罪を問えない場合、名誉棄損やわいせつ物陳列罪などの刑法で罰することができます。
また、犯人に心当たりのない場合は、弁護士を通して個人情報を開示請求することをおすすめします。