侮辱罪の厳罰化を弁護士が簡単解説!懲役刑導入など誹謗中傷対策強化
誹謗中傷等に悩む企業や個人から3000件以上の相談を受け、迅速に解決してきた法律事務所「弁護士法人ATB」が、このような疑問にお答えします。
最後までお読み頂ければ、「侮辱罪の厳罰化」について、基本的なことが分かります。
結論から言うと、インターネット上の誹謗中傷対策を強化するため、法務省が、侮辱罪を厳罰化する方針を固めました。
具体的には、懲役刑と罰金刑が導入されます。
それに伴い、公訴時効も現行の1年から3年に延びるため、刑事責任の追求もしやすくなります。
侮辱罪とは?名誉毀損罪との違いは?
侮辱罪は、公然と「バカ」「死ね」「キモイ」などと侮辱して、社会的評価を下げた場合に成立する犯罪です。
「○○は不倫してる」「○○は前科がある」といったように、事実を書いて社会的評価を下げた場合は、名誉毀損罪に当たります。
「事実を書く」というのは、「実際にあったかどうか証拠によって白黒付けられることを書く」ということです。真実かどうかは関係ありません。
つまり、侮辱罪と名誉毀損罪の大きな違いは、「事実を書いたかどうか」ということです。
現在の法定刑
侮辱罪
拘留とは、「一日以上三十日未満とし、刑事施設に拘置する」という刑罰です(刑法16条)。
科料とは、「千円以上一万円未満」の支払いを命じる刑罰です(刑法17条)。罰金は1万円以上ですから、科料はそれより軽い刑罰です。
名誉毀損罪
比較のために、名誉毀損罪もご紹介します。
両者に差がある理由
侮辱罪も名誉毀損も、ネット上の誹謗中傷でよく成立する犯罪です。
ところが、名誉毀損の場合は、最長3年間刑務所に入れられるか、最大50万円の罰金が科されます。
一方、侮辱罪は、最長29日間刑事施設に拘置されるか、最大9999円の科料で済みます。
このような差があるのは、
・具体的事実を書く名誉毀損の方が、相手の評価(評判)を下げる程度が大きいこと
・侮辱は具体的事実を書かないため、表現の自由で認められる単なる批判との区別が難しいこと
こういった理由が挙げられます。
簡単に言うと、「名誉毀損の方が悪質だから刑が重い」ということです。
侮辱罪厳罰化の経緯
プロレスラーの木村花さんが自殺した問題で、Twitter(ツイッター)で誹謗中傷した男性2名が侮辱罪で略式起訴され、いずれも科料9000円の略式命令を受けました。
この事件を通じて、侮辱でも時に人を死に追いやることもあることが社会問題となり、厳罰化を求める声が上がっていました。
そして議論の結果、法務省が、侮辱罪を厳罰化する方針を固めました。
具体的には、現行の法定刑に、1年以下の懲役か禁錮、または30万円以下の罰金を追加する案を固めたと報じられています。
これでも名誉毀損罪よりは軽いですが、現行の法定刑に比べれば、一定の厳罰化が行われます。
厳罰化によって、どう変わる?
刑事責任が重くなる
これまでは比較的軽い刑罰しか科されなかった侮辱に対して、一定程度重い刑罰が科されるようになります。
これによって、誹謗中傷の抑止につながることも期待されます。
公訴時効が現在の1年から3年に延びる
犯罪には公訴時効というものがあり、時効を過ぎると刑罰を科すことができません。
この時効の長さは法定刑によって変わるのですが、現行の侮辱罪の法定刑では1年です。
つまり、1年以内に起訴しなければなりません。
ところが、匿名で書き込まれた場合、発信者(書き込んだ人)の特定に時間が掛かります。
特に、木村花さんの事件のように多数の書き込みが行われた場合には、1年で全員を特定して起訴するのは簡単ではありません。
ところが、上記のとおり厳罰化されれば、公訴時効は3年に延びます。
これによって時間の余裕ができるため、発信者を特定して、刑事責任を追求しやすくなります。
誹謗中傷に遭ったら、一日も早く弁護士に依頼するのがオススメです
以上、侮辱罪の厳罰化について解説しましたが、改正後の法律が適用されるまでは、まだ時間が掛かります。
こうしている間にも、残念ながらネット上の誹謗中傷は起き続けています。
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まとめ
侮辱罪の厳罰化について解説しました。
従来は、名誉毀損に比べてかなり軽い刑罰しか科されませんでしたが、ネット上の誹謗中傷問題の深刻化を受け、懲役刑・罰金刑が導入される方針となりました。
時効も延びるため、今後は刑事責任の追求もしやすくなります。