名誉毀損で告訴したい!犯人を訴える5つの方法
名誉毀損罪とは、誰もが閲覧したり聞いたりできる場で、個人や団体に対して誹謗中傷を行った場合に問われる罪です。名誉毀損には、刑事告訴と民事上の損害賠償の2つの場合があります。
刑事告訴する場合、名誉毀損は親告罪となるため、被害者が自ら告訴状を警察署などに提出する必要があります。
今回は、名誉毀損を刑事告訴する場合の要件や手続きについてご紹介します。
名誉毀損の刑事的責任|要件・免責・告訴期間
名誉毀損とは、個人や法人を社会的におとしめるような発言を行い、名誉を汚したり壊したりすることです。
では、具体的にどのようなものが名誉毀損に当たるのでしょうか?
名誉毀損は、刑法で以下のように定められています。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2 死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。
引用元:刑法
誹謗中傷などが名誉毀損にあたるかどうかの判断には、3つの要件があります。
- 公然の場であるか
- 個人や団体の社会的評価を低下させるものか
- 具体的な事実の摘示
- 内容の真偽がわかる状態にあるか
この項目では、名誉毀損の刑事上責任に関して詳しくご紹介します。
名誉毀損の要件
名誉毀損は、親告罪といって被害者自信が相手を告訴することで、刑事責任が問われる行為です。
告訴する際には、以下のような要件があります。
公然の場であること
『公然の場であること』とは、誰もが見たり聞いたりできる状況であるということです。これは、公共の掲示板、またはインターネット上の書き込み、投稿、動画なども含まれます。
社会的評価を低下させるものであること
社会的評価が低下するような内容とは、事実であることに関係なく、個人や団体をおとしめるものかどうかです。
- あの会社は残業代を支払わないブラック企業だ
- あの女優は撮影現場でフタッフを罵倒する
- あの会社に社員は枕営業している
このように、事実であるかどうかに関係なく、個人や団体をおとしめる誹謗中傷は名誉毀損にあたる可能性があります。
内容の真偽がわかる状態にあること
内容の真偽とは、誹謗中傷が事実であるかを確認できる状態であるかということです。
会社名や個人の住居近辺などを示唆する内容が書かれている場合は、真偽がわかる状態であるといえます。例えば、「〇〇会社の女性社員」や「〇〇マンションの4階に住んでいる男性」など、個人や団体が特定できるようなことなどが挙げられます。
名誉毀損での免責事項
要件を満たす誹謗中傷であっても、以下の場合は『免責』といって罪に問われないことがあります。
- 公益の利害に関わるものか
- 公益となるものか
- 真実であるかどうか
告訴期間
名誉毀損で刑事告訴する際に重要なのは、告訴期間です。告訴期間は、相手を知ってから6ヶ月以内とされています。
インターネット上の誹謗中傷の場合、書き込んだ相手の特定ができた時点で『相手を知った』ことになるため、刑事告訴を検討している場合は早めに弁護士などに相談することをおすすめします。
なお、起訴ができる期間(公訴時効)は3年間とされています。これを過ぎた場合、相手を起訴することが できなくなります。
名誉毀損罪と侮辱罪の違い
名誉毀損罪とあわせて『侮辱罪』という言葉を耳にしたことはないでしょうか?
侮辱罪とは、名誉毀損罪と同じように、個人や団体に対し誹謗中傷などをおこなった際に問われる罪や責任のことです。
この項目では、名誉毀損罪と侮辱罪のちがいについてご紹介します。
名誉毀損|具体的な誹謗中傷
名誉毀損とは、『公然の場』において『個人や団体が特定できる状態』で『社会的地位を低下させる誹謗中傷』を行った場合に問われる可能性があります。
そのため、個人や団体が具体的名称で書かれていたり、事実を示唆する内容が書かれていたりする必要があります。
侮辱|事実を示唆しない抽象的な罵倒
一方、侮辱罪は刑法で以下のように定められています。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用元: 刑法
侮辱罪では、事実を示唆しない内容での誹謗中傷が該当します。「バカ」「アホ」など、抽象的に汚い言葉で誹謗中傷をおこなった際に問われる可能性があります。
名誉毀損罪を告訴するまでの手続き
名誉毀損は、親告罪といって、被害者が告訴しなければ罪に問うことができません。
この項目では、誹謗中傷をした相手を刑事告訴するための手続きについてご紹介します。
告訴状を警察に提出
名誉毀損を刑事告訴するためには、警察署に『告訴状』を提出します。告訴状は形式自由ですが、相手からどのような被害を受け、それがどのような法律に違反するのか、刑事告訴の根拠などを書き示します。
告訴状の記載事項 |
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なお、告訴状は個人でも作成することができますが、弁護士などの代理人を通じて作成・提出する方が一般的には有利といえます。
そのため、告訴状を提出する際は、弁護士などの専門家に早い段階で相談することをおすすめします。
呼び出し・逮捕
告訴状が受理されると、捜査が開始され、警察側が捜査の必要に応じて相手に対し呼び出しや逮捕を行います。
呼び出しとは、警察が相手に対し警察署への呼び出しを行うことです。自宅に訪問しての聞き取りを行う事もあります。呼び出しはあくまでも任意なので、拒否することも可能です。
ただし、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合は、逮捕によって強制的に捜査や事情聴取を行います。
逮捕・送検・勾留・起訴
逮捕により捜査が開始された場合、留置の必要があると警察が判断した時は、48時間以内に検察官に送致する手続きが行われます。送致を受けた検察官が留置の必要があると判断した時は、24時間以内に裁判官に勾留請求を行います。
身柄が勾留された場合、その期間は最大20日間で、その期間に検察官は、起訴・不起訴の判断を決めることになります。
示談交渉・起訴
加害者が逮捕・勾留された場合、加害者は刑事処分が少しでも軽くしたいのが通常なので、加害者から被害弁償や示談の申し出がなされる事があります。
この際、示談交渉は弁護士などの代理人を立てて行うことが通常です。示談交渉はトラブルの当事者間で行うと、感情的になってしまい、かえってうまくかないことがあるからです。
なお、示談が成立しない場合は、略式起訴による罰金刑、公判請求(起訴)による正式裁判の手続きなどが行われる可能性が高くなります。
慰謝料請求の場合は民事訴訟
刑事告訴は、あくまでも刑事的責任を問うことを目的とするものです。そのため、相手に誹謗中傷による損害や慰謝料を請求したい場合は、民事上の責任を問う『損害賠償請求』を行う必要があります。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元: 民法
なお、名誉毀損に対する損害賠償に関しては、以下のように定められています。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
引用元: 民法
ここでの『財産意外の損害』とは、名誉毀損による精神的負担(慰謝料)などが含まれます。そのため、慰謝料請求も裁判の名目は『損害賠償請求』となります。
まとめ
名誉毀損により加害者を刑事告訴するには、要件を満たしているかどうかを確認したり、煩雑な手続きを行う必要があります。そのため、刑事告訴を行う場合は、弁護士などの専門家の手助けは必要不可欠となります。
弁護士に相談した場合、名誉毀損に対し、民事・刑事のどちらで対応した方が、依頼者の望む解決につながるかも含め、サポートすることが可能です。