ネット上で著作権侵害されたときに著作者がとるべき対処法とは!?
先日、配送業を営んでいた容疑者が発売前の漫画「ワンピース」をネット上に不正に公開して逮捕された事件は記憶に新しいかと思います。しかし、この事件のようにニュースになる程注目を集める著作権侵害の事例は、実際に起こっていることのほんの一部であり、ネット上の著作権侵害は無数に日々起こり続けています。では、もしあなたが実際にネット上で著作権を侵害された場合、私たちは一体どのような対処をするべきなのでしょうか。
そもそも何が著作権侵害にあたるのか
日常生活の中で、なんとなく「これは著作権侵害なのでは?」と感じることは多いかと思います。では、そもそも著作権とはどういったもので、何が侵害にあたるのでしょうか。著作権法の概要は、全文を解説しようとすると非常に長く、難しくなりますが、端的にお伝えすると次のとおりです。
*思想や感情を創造的に表現したものを「著作物」という
(言語・音楽・舞踊、無言劇・美術・建築・地図、図形・映画・写真・プログラムなどの制作物・翻訳や編曲など二次的に手を加えた制作物・辞書や新聞など編集をしたもの・コンピューターで検索できるデータベースなど)【参考条文:著作権法第2条・第10条】
*著作物を作った人を「著作者」という 【参考条文:著作権法第2条】
*著作者には著作物を独占して利用できる権利があり、これを「著作権」という 【参考条文:著作権法第17条】
*著作権は著作物ができた時点で自然に発生し、著作者が亡くなって50年経過すると消滅する(一部例外もあり) 【参考条文:著作権法第101条】
*著作物を利用する時は著作者の許諾を得なければならない 【参考条文:著作権法第30条の3】
*著作者に無断で著作物を利用した場合、最高で10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金を科される可能性がある 【参考条文:著作権法第109条】
つまり、「オリジナルの制作物には著作権があり、作者に無断で使用することが著作権侵害になる」ということになります。
ネット上で著作権侵害されやすい例
では、実際にネット上における著作権侵害に該当する行為とはどういったものが考えられるのでしょうか。ここでは、著作者側の目線から、ネット上で著作権侵害されやすいものや、判断が難しい事例をご紹介します。
画像や文章を無断で使用される
ネット上の著作権侵害の事例の中でも特によくあるケースが自分のWebサイトに掲載していた画像や文章が無断で使用されているケースです。ただし、画像や文章が無断で掲載されている場合でも、著作権法の第32条にある「引用」という形で使用されていれば著作権侵害にはあたりません。引用かどうかを判断する際には以下のポイントを基準にするとよいでしょう。
- すでに公表しているものか
- 引用の必要性があるのか
- 全体の中で引用されている範囲が必要最低限か
- 引用されている部分がはっきりとわかるか
- 引用元が明記されているか
- 引用部分に手を加えていないか
歌詞や楽曲が無断でアップされる
インディーズでバンド活動や歌手活動をされている方などが、無断で歌詞や楽曲をネット上にアップされていた場合も著作権侵害にあたります。プロの場合はJASRACのような管理団体に管理を依頼していることがほとんどですが、インディーズなど個人でアーティスト活動をされている方は注意が必要です。
ちなみに、サッカーの試合などスポーツのプレイに関しては、著作権の対象になりません(ただし、Jリーグの試合などに関しては規約により撮影自体禁止されています)。
InstagramなどのSNSに投稿した画像が無断で使われる
InstagramなどのSNSに投稿した画像が無断で使用されている場合も一部の例外を除いては著作権侵害にあたります。例えばInstagramの場合は、Instagramにアップした画像の著作権はInstagram側にはなく、あくまでもその画像を作成した人にあります。Instagramの画像は専用のアプリを利用してシェア(リポスト)することが可能ですが、この場合も投稿元のアカウント名がはっきりと記載されている必要がありますし、無断で投稿されていた場合、申し立てをすることで投稿を取り消すことも可能です。
自分のWebサイトのリンクが貼られていても侵害にはあたらない
他人のWebサイトに自分のWebサイトへのリンク(URL)が無断で貼られることは原則として著作権侵害にはあたりません。これは、URL自体は著作物にはあたらないからです。しかし、誹謗中傷をするなど名誉毀損といえる内容とともに、Webサイトのリンクを貼られた場合や、いわゆる「フレームリンク」と呼ばれるWebサイトの画像などと共にリンクを貼っている場合は、リンク先の著作物があたかも自分のサイトの著作物であるかのように見えることがあるため、著作権の侵害にあたる可能性があります。
著作権侵害された時の対処法
上述のとおりネット上での著作権侵害には様々なケースが考えられます。しかし、著作権侵害については一部の例外を除き「親告罪」となっているため、著作権侵害をされた被害者が訴えない限りは加害者を罰することができない決まりになっています。では、実際にネット上で著作権侵害をされていることに気づいた場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。
証拠を記録しておく
加害者に直接著作権侵害を抗議して解決しない場合でかつ、最終的に裁判を起こすことになれば、相手が著作権侵害をしているという証拠が必要になります。加害者に直接抗議をする場合は、著作権侵害が確認されるWebページを保存したりキャプチャをとるだけでも証拠になり得ますが、裁判となった場合には日時の記録や記録されている日時が正確であるかを示す証拠も必要となってきます。そのため、加害者に直接抗議をしても解決に至らない場合は、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。
相手やサービス運営会社へ直接抗議する
ブログやInstagramの場合はコメント欄から相手に直接抗議できますが、相手が対応してくれない場合や、直接抗議する方法がない場合は、そのサービスを運営している運営会社へ抗議をしましょう。明らかに著作権侵害であると判断できる場合には、これらの抗議で解決することも多いといえます。
Googleに申し立てをする
GoogleはアメリカのDMCA(デジタルミレニアム著作権法)という法律に対応しているため、Google検索で著作権侵害をしているサイトが表示される場合は、専用の申込みフォームよりGoogleに対象のURLを報告し、著作権侵害の申し立てをすることが可能です。申し込みフォームでは、連絡先や著作権対象物や署名などを入力し申し立てが承認されれば対象のページは削除されます。
民事上の請求をする
著作権侵害をされた場合、被害者は書面などで「差止請求」「損害賠償請求・不当利得返還請求」「名誉回復等の措置」という3つの民事上の請求を加害者に対して行い、示談交渉をすることができます。加害者が著作権侵害を認めず、示談が成立しない場合は、裁判で争うことになります。
裁判で争う
民事上の請求をしたものの示談が成立しなかった場合は、裁判所を通して話し合いをする「民事調停」、裁判所に判決を求める「民事訴訟」、捜査機関に対して事件の捜査、さらには加害者に対して処罰を求める「刑事告訴」のいずれかの方法で解決をはかることになります。このように法的な手続きが必要になる場合は専門的な知識も必要になってくるため、まずは弁護士に相談をすることが賢明でしょう。
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コピーや転載が簡単にできてしまうネット上において、個人で自身の著作物を完璧に保護することは非常に困難です。
ネット上で著作権侵害をされないために、コピーライトを明示したり、右クリックを禁止にするなど、まず著作者自身が対策をとることも重要ですが、もし著作権を侵害されてしまった場合は、被害を拡大させないためにも早めに専門家へ相談されることをおすすめします。