ネットの誹謗中傷は何罪に当たる?7つの犯罪を弁護士が簡単解説
SNS・ブログ・掲示板などで誹謗中傷して、逮捕されたり刑罰を受けるニュースを見ることがあります。
どういう投稿をしたら、何罪に当たるのでしょうか?
誹謗中傷等に悩む企業や個人から3000件以上の相談を受け、迅速に解決してきた法律事務所「弁護士法人ATB」が、このような疑問にお答えします。
最後までお読み頂ければ、「ネット上の誹謗中傷が何罪に当たるのか」が分かります。
法律は難しい部分も多いので、「法律のことは分からない!」という方向けに、初歩的なことを中心に解説します。
個人や企業が書き込みに適切に対応するためにも、犯罪に当たる場合・当たらない場合の境界線は知っておくべきです。
【結論】誹謗中傷は何罪に当たる?
・匿名掲示板(5ちゃんねる(5ch)・ホスラブ(ホストラブ)・爆サイ.comなど)
・Googleマップの口コミ
・転職サイト
・ブログ
こういった場所での誹謗中傷が、後を絶ちません。
そして、「こういうことをしたら、こういう犯罪に当たる」というのは、刑法を中心に定められています。
しかし「誹謗中傷罪」といった形で、直接定めた法律はありません。
誹謗中傷が犯罪に当たるのは、誹謗中傷の結果、主に次の罪に当たる場合です。
・名誉毀損罪(刑法230条) ・侮辱罪(刑法231条) ・脅迫罪(刑法222条) ・強要罪(刑法223条) ・信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条) ・傷害罪(刑法204条) |
実際に逮捕者も出ていますので、具体例を挙げながら解説します。
ただし、同じ言葉でも、犯罪に当たるかどうかはケースバイケースです。
例えば「バカ」という言葉も、文脈次第で冗談で済む場合もあれば、誹謗中傷に当たる場合もあります。
具体例は、あくまでも参考程度に留めて下さい。
実際に誹謗中傷を受けて困っている場合は、弁護士に相談して対処するのがオススメです。
名誉毀損罪(刑法230条)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
簡単に言うと、ネット上で(=公然と)、事実を書いて(=事実を摘示し)、個人・会社などの評価を下げたら(=人の名誉を毀損したら)、成立する犯罪です。
【具体的な投稿例】
・○○は、不倫している ・○○は、先日起こった事件の共犯者だ ・○○社は、反社会的勢力とつながっている |
公然とは?
X(旧Twitter)やFacebookを限定公開にしている場合、参加許可や招待が必要な非公開グループでも、「公然」に当たると思って下さい。
1対1のDMやメールで誰かに送った場合も、「公然」に当たる可能性は十分あります。
その1人が不特定多数に広げてしまう可能性も考慮されるからです。
事実を摘示とは?
事実を摘示するというのは、具体的な事実内容を示すということです。
そして「その事実の有無にかかわらず」とあるとおり、真実かどうかは関係ありません。
「本当のことなら言って良い」というのは間違いです。
名誉を毀損とは?
名誉を毀損するというのは、社会的評価を下げるということです。
名誉を毀損しても、名誉毀損罪が成立しない場合
公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない(刑法230条の2)
では、結果的に真実でなかった場合に常に名誉毀損罪が成立するかというと、そうではありません。
最高裁判所昭和44年6月25日判決は、次のとおり判断を示しました。
刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。
つまり、公共性・公益性に加え、真実であることの証明または真実だと誤信したことについて相当の理由があるときは、名誉毀損罪は成立しないということです。
典型例は、政治家の不正行為を暴く報道です。
しかし報道機関ならまだしも、一般人がこの要件を満たすのは、かなり難しいです。
侮辱罪(刑法231条)
事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
事実を示さなくても、公然と侮辱して社会的評価を下げた場合に成立する犯罪です。
【具体的な投稿例】
・カス ・死ね ・クズ人間 ・無能でバカ ・見るに堪えないブス |
事実を書かない分、名誉毀損罪よりは刑が軽いです。
もっとも、ネット上の誹謗中傷対策を強化するため、侮辱罪が厳罰化され、懲役刑と罰金刑が導入される見込みです。
脅迫罪(刑法222条)
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
生命・身体などに危害を加えると伝えることで、成立する犯罪です。
本人だけでなく、親族に危害を加えると伝える場合も同様です。
【具体的な投稿例】
・殺す ・放火する ・監禁する ・ボコボコにする |
実際に、お笑いコンビ「おぎやはぎ」の小木さん・矢作さんを名指しして「トンカチで顔面グシャグシャにしてぶっ殺します」と書き込み、脅迫などの容疑で逮捕された事件もありました。
また、タレントの中川翔子さんについて、「自殺しろ」「殺害する」などと書き込んだとして、脅迫と侮辱容疑で書類送検された事件もありました。
このように、芸能人や政治家に対するものも多いですが、もちろん一般人に対するものでも脅迫罪に当たり得ます。
また、このような直接的な表現でなくても、「夜道に気を付けろ」「火元に気を付けろ」「こ○す」といった書き込みでも、文脈などによって脅迫罪に当たる場合もあります。
強要罪(刑法223条)
1 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
「○○しないと殺す」「○○しないともっと酷い目に遭わせる」といった書き込みをして、本来義務のないことを行わせたり、「○○したら殺す」といった書き込みをして、権利の行使を妨害した場合に成立する犯罪です、
【具体的な投稿例】
・謝罪動画を公開しないと殺す ・イベントに出演したら酷い目に遭わせる |
信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233,234条)
233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
少し分かりづらいですが、この2つの条文で、「信用毀損罪」「偽計業務妨害罪」「威力業務妨害罪」が定められています。
信用毀損罪
簡単に言うと、デマを流したり、人を騙したりして、経済的信用(支払い能力など)を傷付ける犯罪です。
名誉毀損罪は社会的信用を傷付ける犯罪ですが、こちらは経済的信用を傷付ける犯罪です。
【具体的な投稿例】
・○○は、代金を踏み倒す酷い奴だ ・○○社は、もうすぐ倒産する |
偽計業務妨害罪
簡単に言うと、デマを流したり、人を騙したりして、個人や会社の業務を妨害する犯罪です。
例えば、警察による警備が行われたり、お店を閉めたり、イベントを中止せざるを得なくなるに足りる行為が行われれば、業務が妨害されたと言えます。
【具体的な投稿例】
・○○のラーメンに、ゴキブリが入っていた ・○○社の商品には、有害物質が使われている |
威力業務妨害罪
簡単に言うと、暴力や脅迫などを使って、個人や会社の業務を妨害する犯罪です。
こちらも、警察やお店などの業務が妨害されるに足りる行為が行われれば成立します。
【具体的な投稿例】
・○○に爆弾を仕掛けた ・○○社に乗り込んで全員殺してやる |
傷害罪(刑法204条)
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
傷害罪として一般的にイメージされるのは、身体的な暴力を加えて怪我をさせる場合です。
しかしこれに限らず、ネットでの誹謗中傷が原因で、相手が心的外傷後ストレス障害 (PTSD)になった場合などは、傷害罪が成立することがあります。
誹謗中傷や業務妨害に遭ったら、一日も早く弁護士に依頼するのがオススメです
SNSや掲示板での書き込みは、瞬く間に拡散するおそれもあります。
もしあなたが誹謗中傷や業務妨害に遭ったら、弁護士にご相談ください。
当弁護士法人では、投稿者の特定から損害賠償請求、投稿の削除、警察への被害届の提出・告訴も対応可能です。
初回無料の法律相談を受けておりますので、手遅れになる前にご相談下さい。
土日を含めできる限り迅速な対応を心がけております。
公式LINEから相談内容を入力して頂ければ、自動で費用の見積もりが表示されます(そのまま無料相談の申込も可能です)。
まとめ
ネットでの誹謗中傷によって成立しうる犯罪を、7つご紹介しました。
利用する場合は、くれぐれも注意して書き込むようにしてください。
また、自分・自社について書かれた場合も、これを基準に対応を検討してください。