ネットに悪意あるコメントを書き込んだら逮捕されるケースはあるのか
インターネット掲示板やSNSでは、他のユーザーをコミュニケーションをとるうちに、ついつい感情的になって悪意あるコメントを投稿してしまうこともあります。顔が見えないコミュニケーションは、発言や投稿が本来の意図や自分の意思に反して解釈されることもあるでしょう。
軽い気持ちで行った投稿は、誰もが見られる状態であることから『みんなの前で誹謗中傷をされた』ということになり、名誉毀損や侮辱などの責任が問われる可能性もあるのです。
では、ネット上で人の悪口を書き込んでしまったとき、どのような際に刑事事件になってしまのでしょうか?
今回は、ネットに他人への悪意あるコメントの投稿で問われる刑事責任や実際に逮捕された事例についてご紹介します。
名誉毀損罪|具体的な事実をとりあげて中傷
容疑者と同じ名前の人を誹謗中傷して逮捕
11人全員不起訴 あおり運転別人を中傷
神奈川県の東名高速で昨年6月、あおり運転の末の追突事故で夫婦を死亡させたとされる男と無関係の男性をインターネットで中傷したとして、名誉毀損(きそん)容疑で書類送検された11人全員が不起訴処分になった。検察は「他人の投稿をコピーしただけ」などと判断したが、事実無根のデマに悩まされた男性は「司法はネット被害への危機感がない」と訴え、不起訴を不当として検察審査会への審査申し立ても検討している。【宮城裕也、平川昌範、柿崎誠】
引用元: 毎日新聞|11人全員不起訴 あおり運転別人を中傷
名誉毀損の内容
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元: 刑法
名誉毀損罪とは、公然と事実の摘示によって、他人の社会的評価を低下させる行為をしたときに成立する罪です。
インターネット上の投稿は不特定多数が見る可能性があるので「公然」の要件を満たします。また、誹謗中傷の対象は、個人や企業などの区別はありません。インターネットの掲示板やSNSなどで、具体的な事実を取り上げ、他人を誹謗中傷した場合、名誉毀損として責任が問われる可能性があるのです。
なお、名誉毀損では、具体的事実を取り上げていることがポイントになりますが、投稿した内容の真偽は関係ありません。
侮辱罪|抽象的な言葉による中傷
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
引用元: 刑法
侮辱罪は、事実の摘示以外の方法によって他者の社会的評価を低下させるような行為をした場合に成立する犯罪です。たとえば、「ばかやろう」「ゲスの集まり」「社会のくず」などの投稿をされた場合には、侮辱罪が問題になります。
侮辱罪が成立する場合にも警察に逮捕されるおそれがありますし、その場合に刑事裁判になると、拘留または科料の刑が科される可能性があります。
業務妨害罪|風評被害などが発生するような中傷
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
引用元: 刑法
企業(や営業している個人)に対してネット上で悪意あるコメントを投稿すると、それが偽計業務妨害罪になる可能性があります。
偽計業務妨害罪とは、虚偽の事実を広めたり偽計を用いたりすることによって対象者の業務を妨害する行為です。
そこで、ネット上で「〇〇社の商品は品質が悪くすぐに壊れるから、絶対に買わない方がいい」などと書いたとき、それが虚偽の内容になっていたら、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
この場合にも警察に逮捕される可能性がありますし、裁判になったら3年以下の懲役刑か、50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
信用毀損罪|社会的信頼を傷つける中傷
企業に対してネット上で悪意あるコメントを投稿すると、信用毀損罪が問題になるケースもあります。信用毀損罪(刑法233条前段)とは、虚偽の事実を流すことによって、対象者の経済的な信用を失わせる行為をすることです。たとえば「あの会社は倒産寸前だから取引するとやばい」などと書いた場合、信用毀損罪が成立するおそれがあります。
この場合にも、警察に逮捕される可能性がありますし、刑事裁判になると、3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。
インターネット投稿によるトラブルは弁護士に相談
以上のように、ネット上で他人や他社への悪意あるコメントの投稿により、犯罪が成立して警察に逮捕される可能性があります。ネットを利用する場合には、法律に触れないように、慎重に書き込み内容を考えながら投稿をすることが重要です。
万一間違った投稿をしてトラブルになった場合や、トラブルが起こりそうな場合には、問題が大きくなる前に、早めにネット問題に強い弁護士に相談しましょう。