発信者情報開示請求の意見照会書が届いたらどうすべき?弁護士が対処法を解説
突然、「発信者情報開示に係る意見照会」というものが届きました。
ネット上の私の投稿が権利侵害に当たるということで、私の名前や住所を開示するよう求められているのですが、どうすれば良いでしょうか?
私は損害賠償しなければならないのでしょうか?
拒否したら、どうなるのでしょうか?
誹謗中傷等に悩む企業や個人から3000件以上の相談を受け、迅速に解決してきた法律事務所「弁護士法人ATB」が、このような疑問にお答えします。
最後までお読み頂ければ、「SNSの運営会社やインターネットプロバイダから『発信者情報開示に係る意見照会』が届いた場合の対処方法」などが分かります。
放置すると大変なことになりかねないので、適切に対処してください。
なお、この記事では、特に書き分けない限り、コンテンツプロバイダ(SNSや掲示板の運営会社)と経由プロバイダ(OCNやソフトバンクなどインターネット回線を提供している会社)を、まとめて「プロバイダ」と呼びます。
「発信者情報開示に係る意見照会」とは
「権利を侵害されたと主張している人が、あなたの個人情報を開示して欲しいと言っているのですが、教えて良いですか?」という意見照会です。
下記のようなサイトから来る場合と
- SNS(X (旧Twitter)・YouTube(ユーチューブ)・Instagram(インスタグラム)など)
- ブログ
- レンタルサーバー
下記のようなプロバイダが来る場合があります。
- NTTドコモ
- ソフトバンク
- KDDI
- NTTぷららなど
あなたがサイトで名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害などの誹謗中傷をした場合に、被害者が損害賠償請求などを行うには、あなたの氏名や住所などが必要です。
そこで「発信者情報開示請求」という手続きを使って、被害者はサイトやプロバイダに対して、投稿者(発信者)の情報を開示せよと請求できます。
具体的には、
・氏名 ・住所 ・電話番号 ・メールアドレス ・IPアドレス |
こういった情報が対象です。
そして開示請求を受けたサイトやプロバイダは、特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて発信者の意見を聴かなければなりません。
特別な事情とは、匿名掲示板のようにあなたの住所や氏名を把握していない場合などです。
どういう風に意見照会されるの?
意見照会の方法に、特に決まりはありません。
SNSの場合は、住所の登録が要らない場合も多いですから、そもそもプロバイダは住所を把握していません。
ですから郵送ではなく、メールやアプリ上で意見照会される場合が多いでしょう。
他方、あなたが使用したプロバイダの場合は、契約時に住所を把握しているため、郵便で送ってくる場合が多いでしょう。
また、照会の際の名称(文章やメールのタイトル)も決まりはありません。
照会が届いたらどうすべきか?
照会には、具体的な投稿内容など、開示請求の具体的な根拠が書いてあります。
そして請求された側の状況としては、次の3つがあり得ます。
①全く身に覚えがない場合 ②自分が投稿したけど、誹謗中傷ではないと考える場合 ③自分が投稿したことに間違いなく、開示が認められてもやむを得ないと考える場合 |
それぞれどう対処すべきか、具体的に解説します。
①全く身に覚えがない場合
意見照会の後、情報を開示するかどうかは、最終的にプロバイダが判断します。
つまり、開示に同意しなくても、プロバイダが開示すべきと判断すれば開示されます。
ですから、きちんと理由を書いた上で、開示に同意しない旨回答しましょう。
ただ、「投稿したのは自分ではない」という証明は簡単ではありません(無いことを証明するのは難しいからです)。
全く身に覚えがない場合は、弁護士に相談して文章を考えたり、弁護士を代理人に付けて、しっかり回答した方が良いでしょう。
なお、経由プロバイダの場合は、あくまでも契約者宛に照会があります。
ですから、自分は身に覚えがなくても、家族が投稿している場合があるので注意して下さい。
②自分が投稿したけど、誹謗中傷ではないと考える場合
この場合も、違法でないと考える理由をしっかりと書いた上で、開示に同意しない旨回答しましょう。
開示請求されたからといって、必ずしもその請求が正しいとは限りません。
つまり、開示請求が認められるためには、
・請求者の権利が侵害されたことが明らかであること ・発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があること |
という要件が必要です。
ですから、例えば請求者が「名誉権の侵害があった」と主張している場合は、名誉権の侵害はないということを、具体的に(できれば資料もつけて)反論します。
この場合も、弁護士に相談して文章を考えたり、弁護士を代理人に付けて、しっかり回答した方が良いでしょう。
③自分が投稿したことに間違いなく、開示が認められてもやむを得ないと考える場合
この場合にどう対処するかは、ケースバイケースです。
例えば、それなりの理由を付けて同意しないというのも一つです。
それでもプロバイダが開示する場合もあれば、開示しない場合もあります。
開示されたとしても、損害賠償請求してくるかどうかは分かりません。
また、開示されなかったとしても、裁判や仮処分を使って更に開示を求めてくることもあれば、求めてこないこともあります。
つまり、同意しなかった結果どうなるかは、プロバイダや請求者次第なのです。
それに委ねるというのも一つですが、最悪の場合、裁判で負けて多額の賠償義務を負うこともあります。
裁判では、発信者の特定に掛かった調査費用を、発信者に賠償させる判決も出ています。
そう考えると、あなたが自発的に請求者に連絡して謝罪した上で、ある程度の金銭を払って示談する方が良いケースもあります。
ここは、投稿の内容、裁判になった時の見通し、請求者の考え等によるため、本当にケースバイケースです。
非常に判断が難しいので、一度弁護士に相談するのもオススメです。
無視したら罰則はあるのか?
何も回答せず放置しても、それ自体に罰則や損害賠償責任はありません。
しかし、どう対応するかで展開は変わりますので、慎重に対応してください。
開示を拒否した後の流れ
プロバイダが開示しないと判断した場合、請求者は、そのまま諦める場合もありますし、裁判や仮処分手続きで開示を求める場合もあります。
もし裁判や仮処分で、裁判所が「開示せよ」と判断した場合は、発信者が拒否してもプロバイダは情報を開示します。
そしてその情報を基に、損害賠償請求などをしてくる可能性があります。
照会が届いたら、一日も早く弁護士に相談するのがオススメです
以上、照会が届いた場合の対処法を解説しました。
照会が届いたとき、焦ってパニックになってしまう方もいれば、安易に「大したことない」「大丈夫だろ」と考えてしまう方もいます。
しかし大事なのは、請求の内容を法的に検討して、見通しを立て、最善の選択をすることです。
ところが法律の専門家でない限り、その判断は相当難しいでしょう。
照会が届いたら、決して放置したり安易に考えず、一度弁護士に相談することをオススメします。
当弁護士法人では、開示請求を受けた方の場合は、1時間3万3000円(税込)で相談を受けております。
まとめ
プロバイダから、「発信者情報開示に係る意見照会」が届いた場合の対処法について解説しました。意見照会の意味や、開示を拒否した場合の流れについても解説しましたので、ぜひ参考にして下さい。