誹謗中傷対策マニュアル
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2020.03.28

ネット問題

犯罪の犯人が実名報道となる基準とは?実名報道記事の削除依頼の方法

ネットに掲載された実名報道の記事って、削除してもらえるのでしょうか。
全ての記事が削除してもらえるとは限らないけど、条件にあえば対応してもらえるから説明するね。

 

犯罪者が実名報道となる基準とは?

連日のようにテレビをはじめとしたメディアで報道される事件。その際に実名が出されることもあれば、匿名の場合もあります。実名報道となる基準は何なのでしょうか。解説します。

実名報道の基準とは?

日本における主要な報道機関は実名報道を原則としています。一般的に犯罪に関する報道は「公益の目的に基づく、公共の利害に関する事実の報道」であり、名誉毀損には該当しません。このため刑事事件で逮捕されると、テレビや新聞等で実名報道される可能性があります。しかし実名報道をするかどうかの明確なガイドラインは存在しません。報道各社により個別に判断しているのが実情です。このため似たような内容の事件・事故であっても、実名報道される事件と匿名報道の場合があります。

NHKは公式サイトで「NHK放送ガイドライン」を公開しています。事件や事故の場合を含め実名報道が原則。人権への配慮から警察当局が被害者や関係者の名前を匿名で発表した場合もNHKの責任において実名か匿名か判断するとしています。

日本新聞協会は「実名と報道」という冊子を発表しています。個人情報保護の観点から匿名化の流れが起き、それに従うべきなのか、闘うべきなのか1年間検討を重ねてまとめられたのがこの冊子です。結論としては、被害者側に対する配慮を中心に論じつつ、次の3点を理由に実名発表にこだわりたいとしています。

  • 「知る権利」への奉仕
  • 不正の追求と公権力の監視
  • 歴史の記録と社会の情報共有

 

▼NHK放送ガイドライン
https://www.nhk.or.jp/pr/keiei/bc-guideline/index.htm

▼実名と報道(日本新聞協会)
https://www.pressnet.or.jp/publication/book/pdf/jitsumei.pdf

 

実名報道されやすい場合とは?

実名報道がされやすいケースとしては次の5つが挙げられます。

①事件・事故の話題性やニュース性の高さ

過去の報道を見ると、話題性やニュース性が高い事件や事故の場合、実名報道が多い傾向にあります。

②被疑者の社会的地位が高い

政治家や有名人、官僚など、被疑者の社会的地位が高い場合、注目が集まりやすい場合は、実名で報道される可能性が高くなります。

③ 重大な事件

裁判員裁判になるような殺人事件や強盗致傷事件など、重大な事件は実名報道になります。また犯人が逃走中であるような場合も実名で報道されます。

④ 別件逮捕

別件逮捕が行われた場合、別件逮捕での拘留中は原則匿名ですが、本件逮捕に切り替わると実名報道になります。

⑤ 任意捜査や書類送検の場合

任意捜査や書類送検の場合、多くは匿名報道になりますが、社会的責任が重いケースなどでは実名報道になることもあります。なお、実名報道された被疑者が不起訴処分になると、報道機関ではその時点で匿名に切り替え、過去の記事に対しても実名を閲覧できないようにするケースもあります。

実名報道されにくい場合とは?

実名ではなく匿名報道になるのは、次のような場合です。

① 被疑者が未成年の場合

少年法61条では少年の実名報道を禁止しています。このため被疑者が未成年の場合、原則実名報道は行われません。ただし、例外規定が存在し、次の条件に合致する場合は、実名や写真の掲載が認められるケースがあります。

  • 殺人や放火などの重大事件で犯人が逃走中のため、再び凶悪な犯罪を行う可能性があるとき
  • 指名手配中の被疑者の捜査に協力する目的があるとき
  • 少年保護の見地より社会的利益を優先すべき特殊なケース

 

また少年法には罰則がなく、週刊誌を中心に過去に実名報道がなされたケースがありました。

② 刑事責任能力がない場合

被疑者に刑事責任能力がないと判断される場合には、原則実名報道はされません。例外として実名報道が行われるのは次のようなケースです。

  • 重大事件である
  • 薬物中毒者が一時的に錯乱状態になり罪を犯した場合
  • 犯罪内容が凶悪で犯人が逃走中の場合、指名手配されている場合

 

実名報道とプライバシー権におけるメリット・デメリット

次に実名報道とプライバシー権についてみていきましょう。実名報道により多くの人が得られるメリットがある一方で、デメリットを受ける人もいます。

プライバシー権とは?

他の人に知られたくないような私的な情報を「プライバシー」と呼び、それを自らコントロールする権利が「プライバシー権」です。例えば、過去の犯罪歴や持病、病歴、身体的特徴、結婚離婚歴などが該当します。法律的には、プライバシー権は、次の3つの要素を持つ情報が公開された場合に、侵害されたとみなされます。

① 私生活上の事実または事実と受け取られる可能性がある
② ①の事実が公開されていないものである
③ ①の事実が通常は公開を欲しないものである

プライバシー権の関係からみた実名報道のメリットとは?

報道機関には「表現の自由」があります。ジャーナリズムとしての原因究明や責任追及など社会的に大きな役割を担っているのです。例えば、顔写真や詳しい人物像を紹介することで、読者に共感と問題意識を醸成させ、危機意識を社会に広く共有させることもできるでしょう。また憲法第21条では「国民の知る権利」が定められており、情報を伝えるのが報道機関でもあります。

実名報道を行うことで、社会的には犯罪被害の拡大防止や再犯防止などの抑止効果が得られるのは大きなメリットと言えるでしょう。ただし加害者本人の名誉権やプライバシー権がある程度侵害されるのも事実です。

プライバシー権の関係からみた実名報道のデメリットとは?

実名報道は社会的なメリットがある反面、プライバシー権が侵害されるケースもあります。

実名報道について裁判所は「報道が行われた時点までに警察が充分に捜査を尽くして情報を収集しており、公表当時に有罪と認められるだけの資料がそろっていたのであれば、違法にはならない(名誉毀損にならない)」としています。ただし、報道内容に誤りがあった場合、その点について名誉毀損による損害賠償請求を認めた判例があります。

また冤罪や不起訴であっても、個人情報が拡散することで。以後の社会生活において様々な不利益を被る可能性もあるでしょう。

ネット上に残る実名報道記事の削除は可能か?

インターネット上に残る実名が記載された記事を、削除してもらえるかどうかについて解説します。

実名が掲載された記事など削除申請できる基準は?

プライバシー権の侵害を理由に、インターネット上の記事の削除依頼をすることは可能です。ただし、事件に関する情報は公益性の高い情報でもあり、「知る権利」も保障されなくてはいけないことから、全ての記事を削除してもらえるわけではありません。判断基準は次の通りです。

① 事件発生からどれだけ時間が経っているか

事件発生から時間が経つにつれて、逮捕に関する情報が世間一般に役立つ度合いは低くなります。ただし経過時間に関する明確な判断基準はありません。事件の性質や社会的な関心の度合いにより決められているのが現状です。

② 不起訴の場合、起訴の場合は執行猶予になっているか

不起訴になった場合は記事の削除が認められやすい傾向にあります。また起訴された場合も執行猶予がついていると実刑と比較して認められやすいでしょう。ただし、執行猶予期間が終了していることが一つの目安となります。

③ 更生への取り組みがされているか

執行猶予期間が終了していたり、刑期が満了していたりして、社会復帰を果たしているような場合は削除請求が認められる可能性が高いです。逮捕歴を誰でも閲覧できるような状態では、更生後の生活に悪影響を及ぼす可能性があり、状況を考えて判断されます。

④ 記事削除の必要性の有無

例えば社会復帰を目指して就職活動をしているものの、逮捕に関する記事の影響で採用されない場合は、事情を記載した陳述書を裁判所に提出することで削除請求が認められる可能性があります。

記事の削除依頼をするには?

基本的にはどのメディアについてもお問い合わせ窓口や削除申請窓口に対応を依頼しましょう。新聞社やネットニュースなどは3-1に記載した基準を満たしていれば削除されやすい傾向にあります。一方でSNSや匿名掲示板、検索エンジンについては、対応されるかどうかは相手の考え方、状況次第です。

また媒体ごとに依頼するのが原則。1つの媒体で削除が認められたからといって、他の媒体もスムーズに進むとは限りません。

削除依頼をする際は、該当する投稿のスクリーンショットを保存しておくなど、もしもの場合に備えた対応も必要になってきます。自分でも削除申請はできますが、基本的にはインターネットに詳しい弁護士に依頼した方がいいでしょう。時間のロスを防ぎ、的確かつ迅速な対応により、速やかな削除につながります。削除を拒否された場合も弁護士のサポートを受け、法的に必要な書類を揃えて提出した結果削除できた事例などもあります。

まとめ

多くの報道機関で実名報道が行われていますが、明確なガイドラインがないのが現状。誰もが突然、実名報道によりプライバシーの侵害にあうか分からない状況です。更生している場合でも過去の実名報道記事が社会復帰の妨げになるケースもあります。

実名報道の記事が出てお困りの場合は、自分だけで解決しようとせず、法的にとれる手段について弁護士にご相談されることをおすすめします。

弁護士法人ATB
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